1930⇒1939

2011年1月アーカイブ

ユニバーサルでのボリス・カーロフ最後のフランケンシュタイン・モンスターである。
また、ユニバーサル社が経営不振で経営陣が変わった後の第一作目の作品でもあり、怪奇映画としては破格の制作費が投じられたという。

「フランケンシュタイン(1931)」「フランケンシュタインの花嫁(1935)」と合わせて、この3本を「聖典」という。

本作ではフランケンシュタイン博士の長男・ウォルフが登場する。当初はピーター・ローレが演ずる予定であったが、諸事情により格上のバジル・ラスボーンが演ずることになった。

セットがドイツ表現主義映画を意識したものになっており、監督も変わったこともあってか、前二作とは作風にも顕著な違いが見られる。

モンスターの活躍自体は研究室内部と、城下の一部と最小限に抑えられており、その分台詞でモンスターの脅威が重厚に描かれている。乗じて、モンスターの強靭さや巨大さが台詞で表現されるが、描写としてはモンスターの巨大さが表現されている演出がなされていない。これがウォルフ役が背の低いピーター・ローレだったならばモンスターの巨大さも幾分強調されていただろうが、ボリス・カーロフの身長180cmに対して、バジル・ラスボーンの身長187cmであることも災いしてか、上げ底靴と頭頂のメイクをもってしても、モンスターとウォルフの身長があまり変わらない。ちなみにカーロフは、イゴール演ずるルゴシよりも身長は低いのである。

そのこともあってか、本作のモンスターは前二作よりも頭が長い。

初代フランケンシュタイン博士の名前がヘンリーからハインリッヒに変更されている。
「フランケンシュタイン」の名は、前作「フランケンシュタインの花嫁」で怪物の名前と混同されるようになったが、本作の冒頭でその点に言及されている。
汽車の中でのウォルフ夫婦の会話においてウォルフが「助手の失態で創造物が怪物になった。人々はその怪物をこう呼ぶ・・・」と名前を口にしようとすると、列車内のアナウンスで「フランケンシュタイン!(次はフランケンシュタイン駅)」と結ばれる。このあたりの演出はなかなか上手い。この演出技法はすでに「魔人ドラキュラ(1931)」でも使われている。

メル・ブルックス監督による「ヤング・フランケンシュタイン」のストーリーは、この作品をベースとしている。