1930⇒1939

2011年3月アーカイブ

本格的な狼男を扱った世界初の作品。

この作品が作られる3年前に、パラマウントで「ジキル博士とハイド氏(1932)」(ルーベン・マムーリアン監督)が公開されている。
研究家の間ではしばしば、本作と「ジキル博士とハイド氏」の因果関係が語られるようだ。
徳の高い科学者が研究の暴走の結果、凶暴な獣人に変化してしまう、というプロットはスティーブンソンの「ジキル博士とハイド氏」そのもので、同作が無声映画時代から好まれて制作されたことを考えると、「倫敦の人狼」、強いては後年の狼男それ自体が「ジキル博士とハイド氏」の亜流とも言えるのではないだろうか?

狼男のメイク・アップはジャック・P・ピアース、特撮は戦前アメリカ映画の特撮王、ジョン・P・フルトン。「最古の狼男映画」とはいっても、その特撮技術はすでに完成されていて、手間のかかったものである。グレンドン博士の顔に隈ができる変身シーンは、前出の「ジキル博士とハイド氏」のそれと同一のものだった。

グレンドン博士の妻、リサに扮するのはヴァレリー・ホブスン。彼女は同時期、「フランケンシュタインの花嫁」でもフランケンシュタイン博士の妻、エリザベスにも扮しており、すっかり「怪奇な嫁女優」だ。撮影当時18歳というから、これまた随分・・・。

ワーナー・オーランド扮するヨガミ博士は、当初ベラ・ルゴシが予定されていたらしいが実現せず、後に「THE WOLFMAN(狼男の殺人)」で同じような役をやることになる。考えたらルゴシは、ドラキュラ、フランケンシュタインの怪物、狼男と三大モンスターを演じているのだが、ドラキュラ以外が「かすっている」ようなものなので、あまりそんな感じがしない。そもそも「THE WOLFMAN」では狼男役ではあったけれども、具体的なメイクはしていないし。そのかわり「獣人島(1932)」で獣人メイクはしている。

2010年公開の「ウルフマン」のアンソニー・ホプキンス扮する狼男は、本作の設定がベースとなったものだ。