1940⇒1949

2016年11月アーカイブ

 RKOが『キャットピープル』(1942)に続いて制作した、 ヴァル・ニュートンのプロデュースによるホラー映画の第二弾。舞台をブードゥ教の本場である西インド諸島に置き、ブードゥの強大な力とゾンビ伝説を絡めながら、主体となるホランド家の愛憎劇を巧みに描いていく。ホランド一家が抱えていた慢性的な問題は看護師ベッツィがやって来ることによって一気に解消されるわけだが、妻と弟の不貞で人間不信に陥った農園主ポールが、危険を冒してまでゾンビと化したジェシカの治療を試みるベッツィに心打たれ、やがてそれが恋心に変わっていく様が丁寧に描かれており、ただのホラー映画ではなく、傑出したラブ・ロマンスであることも特筆すべきところ。また、恐怖演出も地味ながらも秀逸で、リズミカルなドラミングをバックに展開されるブードゥのダンスや、唯一登場する賦役ゾンビのカラフォーの存在感など、この上なく不気味なエッセンスが散りばめられている。ジョージ・A・ロメロの『Night of the Living Dead』(1968)以前のゾンビ映画の最高峰とも言われる傑作。