1960⇒1969

2010年10月アーカイブ

アッシャー家の惨劇

60年代に入ってAIP(アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ)がシリーズ化したエドガー・アラン・ポー映画の第一作目である。これによってAIPのカラーが固まり、監督のロジャー・コーマンの名前もメジャーになったという。

原作では主人公が友人であるロデリックから助けを請う手紙を受け取り、アッシャー邸に赴いて不思議な体験をする、という幾分冗長な短編であったが、これをリチャード・マシスンが躍動的に脚色。マシスン本人が「脚色は楽しかった」と述懐している。

石造りの屋敷が燃え落ちるときに、何故か木造建築の天井か壁が焼け落ちるカットなど「突っ込みどころ」もあるのだが、まあそこはそれ、「細かいことは気にしていない思い切りの良さ」が、この作品、及びポー・シリーズが愛されている要因の一つだと思う。

幻想シーンで登場する幽霊のエキストラを除けば、この作品の登場人物は4人と非常に少ないがあまり気にならない。これは主演のヴィンセント・プライスの存在感の賜物だろう。彼の大仰な芝居は、少々滑稽ではあったが、ノイローゼ気味のロデリックをよく表現していた。

AIPの逸話はケチくさい物が多いが、それはそれなりの「美学」があるようで、必要最低限の状況の中、それを創意工夫で補っている。本作品に限らず、どの作品も実に手作り感あふれる作風である。

2005年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録。

ハマープロの主要スタッフによる、冒険活劇。
秘密結社の首領が「ミイラの幽霊(1959)」や「怪奇ミイラ男(1964)」の墓守役でお馴染みのジョージ・パステル。
また、「蛇女の脅怖(1966)」のマーン・メートランドが顔を出す。

ホラー映画ではないが、秘密結社の拷問や脅迫、処刑など、猟奇的な見せ場が多く、作品全体に絶えず緊張感が流れる。映画導入より、秘密結社の暴挙はエスカレートを続け、英国軍は数々のピンチに陥り、物語が盛り下がること無く、退屈しない。このあたりは演出のテレンスフィッシャーの手腕と言える。

ハリー・ルイスを捕えた秘密結社は、コブラに襲わせる拷問を行うが、この窮地を救うのが本編のマスコットであるマングース。これが実に頼もしい。秘密結社はこれを「カーリの思し召し」として、ハリー・ルイスを開放するのである。

本作は1961年にプロットはそのままに、時代と舞台を変えて「THE TERROR OF TONGS」としてリメイクされる。
日本での公開は1961年10月。

※ちなみに筆者は英語が不得手なうえ、輸入版DVDでの観賞。それでも十分面白かった。