1960⇒1969

2018年10月アーカイブ

吸血ゾンビ

1960年代前半、ユニバーサル・ホラーのリメイクを中心に映画作りを続けていたハマー・フィルムは、マンネリズムの壁に突き当たってしまった。実際、この時期のハマー・ホラーは、クリストファー・リーのドラキュラ映画の不在もあって迷走期に入っていた。そこで、ユニバーサル・ホラーのモンスターとは違う切り口としてハマーが目を付けたのがヴィクター・ハルペリン監督による『恐怖城』(1932)、すなわちゾンビ映画だったのである。呪術師がブードゥの魔力を以て「生ける屍」を悪事に利用するというプロットを借りて作られた本作は、腐りかけているゾンビのメイクや、ゾンビが土中から這い出す演出などが斬新で、後世のゾンビ映画に凄まじい影響を与えることになった。まさに古典ゾンビからモダン・ゾンビへのバトンとなった作品と言える。世界初のカラー・ゾンビ映画であり、それまでのゾンビ映画の集大成ともいえる作品なのだ。

日本では戦前に公開されたゾンビ映画は『恐怖城』のみで、『吸血ゾンビ』は本邦公開二本目のゾンビ映画となる。