ビリケン商会『金星竜イーマ』の製作をご依頼頂きましたが、「出来たら象との対決ジオラマにしたい」というご希望。モノがモノだけに依頼いただいてから完成まで足掛け3年かかりました。簡単というわけにはいかず、完全というわけにも行きませんでしたが、出来る限りやってみました。

【金星竜イーマ】

 今となっては大変レアなキットです。塗装は依頼者様の希望を生かし、映画のカラーライズ版を参考にしてます。下地にソフビカラーを吹き、以降は油性、水性アクリルで塗装。仕上げはエナメルで細部の描画、墨入れです。
 可動で存分に遊べるキットなので接合部分のパテ埋めはしません。尻尾と足にレジンを流し込んで安定強化と変形防止を施してます。
 古いキットだけにモールドが甘い印象がありますが、そこが割とハリーハウゼンの撮影プロップの雰囲気を醸し出していて、今もって良質なクオリティを保ったキットといえます。

金星竜イーマ(ビリケン商会製)
アジアゾウ(フェイバリット製)

 【アジアゾウ】

 「アジアゾウの30㎝フィギュアなんてあるかよ!」
それが手に入らなかったらジオラマ自体お断りするつもりでダメもとで探すと、あっけなく量販店のオモチャ売り場にビッタリサイズのそれがボンと置いてありました。
「これは神様からのジオラマを作れという思し召しか?」 
 製品自体は映画本編のものとは形が違いますが、このフィギュアは中にスポンジが入った軟質ソフビの為に外的加工ができず、その分塗装に工夫を施しました。

「宇宙怪獣イーマと対峙するだけの雄姿」が必要かと思い、イーマよりも強そうな対極の塗装にしました。ソフビカラーで下地を吹き、思いっきり黒でガッツリ墨入れ。目は充血させて凶暴性を表現。モデルアニメの象は黒目が小さいのでそれも意識してます。因みにな象の充血目に対して、イーマの目は涼し気にしてあります。
 個人的見解としては、この見せ場の主役は象なのですよね。

ボルゲーゼ美術館 背面パネル
ボルゲーゼ美術館エンブレム

ボルゲーゼ美術館

 さて、ジオラマです。ご依頼が「ローマ遺跡をバックに象と対決しているイメージ」ということでした。本編を見ると対決の場は遺跡ではなく、ボルゲーゼ美術館前でした。これは3Dモデリングとプリンターの手を借ります。それでも大変な作業でした。支柱から窓格子、アールデコのアーチ、それぞれをバラバラにモデリングして組み合わせていく作業を延々と繰り返します。最大の難関は中央上部のエンブレム。モデリングソフトはZbrushを使いましたが、スキル不足のために形になるまで数か月の時間を要しました(その間、それなりにスキルアップ)。
 窓格子の向こうにはカーテンが確認できるので麻布を貼ってあります。

タイトルプレート(オプション)

タイトルプレート

 本編のタイトルロゴはデザイン的に面白くなかったので、幾分スタイリッシュな予告編のデザインを採用。アウトラインをパスでお越し、SVGファイルに変換後にZbrushで立体化、飛び出しているようにパースをつけます。出力物は多少歪むのでパテ、プラ板などで歪みを修正。文字のオレンジ色で立体感を出すために極力暗色は使わず、黄橙色でまとめました。

 

【作品データ】
『地球へ2千万マイル』ジオラマ(ご依頼品)
金星竜イーマ:ソフビキット組立塗装(ビリケン商会)
アジアゾウ(インドゾウ):軟質ソフビフィギュア改造(フェイバリット)
ボルゲーゼ美術館背面パネル:フルスクラッチビルド
2022年1月30日完成