無声映画鑑賞会~福島ゆかりの映画&田村高廣七回忌
今回の無声映画鑑賞会は「福島所縁の映画&田村高廣七回忌」の特集。
「少年野口英世」と「地獄の蟲」の2本。前者は1941年に作られたトーキー映画の巡回用フィルムと思われるサイレント短縮版で、野口英世の少年時代を描いた物で、火傷のために手が不自由になった清作(英世の幼名)が母の努力と教師や友人たちの友情で手術を受けて手が動くようになるまでの感動作品。面白かった。
そして、「地獄の蟲」である。
これは1979年にマツダ映画社の創始者・松田春翠が私財を投じて作ったニュー・サイレント映画だそうだ。無声映画鑑賞会20周年、稲垣浩監督生活50周年を記念して作られたという。
稲垣浩が38年に監督して作られたものの、検閲のためにズタズタにされた映画のリメイクで、稲垣監修のもとに、山田達雄がメガホンを取った。
オリジナルの主演は坂東妻三郎、リメイクは長男の田村高廣である。
悪徳高利貸しの屋敷を襲った盗賊・黒雲団十郎一味は千両箱6個を盗み出し、それを持って役人が組織した山狩隊の執拗な追跡にあいながら、土場峠を越えて米沢藩領内への逃走を図る。
一癖も二癖もある悪党揃いの一団、その顔を見た者は老若男女問わず皆殺しである。
尋常ならざる重量の千両箱を背負いながらの壮絶な峠越えで、次々と脱落していく中、食べ物も尽きてしまい、仲間割れを起こすなどして、半ば獣と化す。
そして、凄惨な最期を迎える。
出演者がやけに豪華である。田村高廣を筆頭に、宮下順子、松山省二らがメインどころで、宿場町に集う面々も、柳沢真一、柳家小さん、三遊亭園歌、そしてなんと、澤登翠女史までいる。
すでにスターウォーズやスーパーマンが公開され、映画業界が華やかな時代の作品。商業映画が幅を利かす状況に憂いを感じて映画製作に踏み切った松田春翠の心意気に打たれたスタッフ・キャストが集結したという。
音楽担当がなんとすぎやまこういち。なかにし礼・作詞、桑原野人・歌 による主題歌のオーヴァチュアから映画は始まる。何気に大作思考。
この歌がまた「卑怯」なほどカッコ良い。
尚、観賞会では、公開当時のパンフレットがピカピカな状態で100円で売られた。勿論入手した。
眼福。