モールス(2011)

"LET ME IN"
アメリカ / ハマー・フィルム・プロダクション

[Staff]
制作:ナイジェル・シンクレア、サイモン・オークス他
監督:マット・リーヴス
脚本:マット・リーヴス
原作:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
撮影:グレッグ・フレイザー
音楽:マイケル・ジアッチーノ
配給:アスミック・エース・エンターテイメント(日本)

[Cast]
アビー・・・クロエ・グレース・モレッツ
オーウェン・・・コディ・スミット=マクフィー
父親・・・リチャード・ジェンキンス
警官・・・イライアス・コティーズ
オーウェンの母親・・・カーラ・ブオノ
ヴァージニア・・・サーシャ・バレス
ゾリック氏・・・リッチー・コスター
ケニー・・・ディラン・ミネット

[Story]
 オーウェンは日頃学校でひどいイジメに合っている12歳の孤独な少年。母親と団地に住んでいる。母親は離婚のために情緒不安定でイジメの事も相談できない。
 ある日、オーウェンの家の隣に、親子と思われる中年の男と少女が越してきた。奇妙な事に少女は裸足である。
 そして雪の夜、オーウェンが団地の中庭で一人でいると、その少女が現れた。顔が異様に青白く、嫌な臭いがする。オーウェンは少女に話しかけるが少女は「友達にはなれない」と去っていく。しかし、夜の中庭で何度か会ううちに徐々に二人は打ち解けていく。少女の名はアビー。年齢は12歳くらいだという。アビーはオーウェンが学校でイジメに合っている事を知り、「やり返すのよ、私が手伝ってあげる」と言う。

 そんな二人を見ていたアビーの父親は夜な夜な大きな荷物を持って外出する。彼は人気の少ない森の中で、若い男を襲って殺し、逆さ吊りにしてその首を切り、ポリタンクにその血を溜めた。しかし、足を滑らせ、転倒した拍子に、タンクの血をこぼしてしまい、さらに車が通りかかった事もあって、現場をそのままにして逃げ出してしまった。
 同じ夜、オーウェンが部屋の壁に耳を当てると、隣から誰かを詰る、野太い声の叱責が聞こえてきた・・・。

[Text]

 「怪奇映画の殿堂・ハマーフィルム」の意思を継承する形で、心機一転して結成された「新生・ハマー・フィルム」の第一回作品。そして、スウェーデンの新鋭作家、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト原作「モールス」の第二回目の映画化である。同じ原作の映画化作品「ぼくのエリ 200歳の少女」の公開から、ほとんど間をおかずして公開された。

 リメイク作品であるが、リメイクとしては非常に特殊で、原作の映画化の権利を2つの映画会社がほぼ同時に取得し、企画が練られたが、スウェーデンがいち早く完成させ、ハマー側がそれを観た上ですぐに完成させたという。こんな例は(少なくとも私は)聞いたことがない。
 
 「ぼくのエリ」は日本でも歓迎されたが、「吸血鬼」を扱っていながら、いじめられっ子の少年と、吸血鬼エリの心の交流に焦点が置かれ、幾分ハートフルに描かれていたのに対して、この「モールス」では、吸血鬼アビーの怪物性をダイレクトに描き、それを目の当たりにした少年の苦悩と葛藤を残酷なまでに表現した。
 私はこの2作を比較する事には抵抗がある。双方体質が全く違うので、同じネタを扱っていても、「王女メディア」と「アルゴ探検隊の大冒険」くらいの違いがある、と思うのだ。「ぼくのエリ」はどちらかというと「悲喜劇」であり、「モールス」は完全なホラー映画である。
 不幸にも「ぼくのエリ」の完成後にこの作品が製作され、少なからず本作は「ぼくのエリ」にインスパイアされているようだけれども、私は「あれはあれ、これはこれ」という観方だ。
 本作の良いところは、映画の演出技法をふんだんに活用し、質の良いサスペンス・ホラー映画に仕上げてあることだ。編集や演出も巧みでテンポがあり、「情報」を観客に確実に落としていくので、メリハリの効いている作品である。
 怪物をしっかり描き、一方で少年と少女の恋物語もしっかり描かれている。最近のホラー映画としては「深みがある」作品ともいえるかもしれない。

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