ネットリテラシーの欠如が招く惨劇を描いたシチュエーション・スリラーである。事件のきっかけとなる主人公たちの悪戯が災いを産み、その報復を受ける格好であるため、姿なき犯人への同情を禁じ得ない。

2016年6月4日にロサンゼルス映画祭でプレミア上映が行われ、2017年2月10日にアメリカ公開された。


 ルーマニアの修道院を舞台に、死霊館シリーズを通して暗躍する悪魔ヴァラクの秘密に迫る。

 メイン・モンスターの悪魔ヴァラクに対峙するのは、過去に悪魔祓いに失敗しているバーク神父と見習いのシスター・アイリーンというハンパ者コンビである。これをガイドする現地の若者フレンチーってのもナンパ野郎で、「大丈夫か、この三人で?」という、古典的なホラー・コメディの三バカ設定。「自分、ハンパ者ですけど頑張ります!」という三人の成長物語にもなってる。ロケ地になってるルーマニアの古城の景観が素晴らしく、観光映画になっているところもポイントが高い。

 ホラー映画のパロディ要素もあって、とりあえず気が付いたところでは、棺ごと生き埋めにされた神父を助けるためにスコップを突きさして鼻先寸止めなフルチの『地獄の門』(1980)、修道尼の中にシスター・ルースってのがいて、これは『黒水仙』(1948)の、あの怖いシスターの名前。
 
 悪魔シスター・ヴァラクの戦法は、悪意のない地縛霊を脅して、そいつらにターゲットを攻撃させるというもの。そして、基本的に弱い奴に憑依する。これは『エクソシスト』シリーズの逆を行ってる。悪魔パズズは「悪に屈しない意志強固な強い人」に憑依して善に挑戦する孤高の悪魔で、それに比べるとヴァラクは全くの格下。悪魔である上に、同業にも人間にもイジメをするわけだ。で、ヴァラクは、かの修道院でも封印が解かれた大戦以降、大暴れしてシスターたちを殺しまくってるんだけど、地縛霊になったシスターたちは痩せても枯れても神の手先なのでクーデターにあうという恰好。

 このシリーズは、怪奇現象がみんなの目の前で起きるので、「志村ー!うしろー!」なイライラが無い。調査に来た警察の目の前でも椅子が動いちゃって「これは警察の範疇じゃないですね」と帰っちゃったりする。お化け被害に遭っている家族はなぜか揃いも揃って貧乏人の子だくさんで、ご近所も巻き込んでお化けを見ているので、寄ってたかってお化けと対決する羽目になる。登場人物がやたら多いのが特徴の一つ。で、意外にハートフルで、悪魔以外の人たちがみんないい人ばっかり。そこには家族愛やご近所づきあい、友情、助け合いの精神などがあり、それが結集してみんなで悪魔を倒すという、いわば、「いじめっ子に立ち向かうもやしっ子の成長物語」というジュブナイル的な趣を持つ、とっても怖いホラー映画シリーズなのである。

【関連作品】

『死霊館のシスター』(2018)・・・1952年の事件
『アナベル 死霊人形の誕生』(2017)・・・1945?1957年の事件
『アナベル 死霊館の人形』(2014)・・・1967年の事件
『死霊館』(2013)・・・1971年の事件
『悪魔の棲む家』(1979・2005)・・・1974年の事件
『死霊館 エンフィールド事件』(2016)・・・1977年の事件

※時系列順

『アナベル 死霊館の人形』(2014)の前日譚。

【関連作品】

『死霊館のシスター』(2018)・・・1952年の事件
『アナベル 死霊人形の誕生』(2017)・・・1945?1957年の事件
『アナベル 死霊館の人形』(2014)・・・1967年の事件
『死霊館』(2013)・・・1971年の事件
『悪魔の棲む家』(1979・2005)・・・1974年の事件
『死霊館 エンフィールド事件』(2016)・・・1977年の事件

※時系列順