2014年の最近のブログ記事

『死霊館』(2013)の前日譚。

【関連作品】

『死霊館のシスター』(2018)・・・1952年の事件
『アナベル 死霊人形の誕生』(2017)・・・1945?1957年の事件
『アナベル 死霊館の人形』(2014)・・・1967年の事件
『死霊館』(2013)・・・1971年の事件
『悪魔の棲む家』(1979・2005)・・・1974年の事件
『死霊館 エンフィールド事件』(2016)・・・1977年の事件

※時系列順

 ブラム・ストーカーの原作小説よりも過去のドラキュラ映画、特にハマー・フィルムの作品群に影響を受けて脚色・映画化されている。ジョナサン・ハーカーがドラキュラ城の蔵書の目録作りのために雇われるところや、女吸血鬼とドラキュラの抗争に巻き込まれるあたりは『吸血鬼ドラキュラ』(1958)から、女吸血鬼の名が「タニア」で、ドラキュラと共にハーカーの接客をするあたりは『ドラキュラ復活!血のエクソシズム』(1970)からのイタダキである。また、ドラキュラが城下の人間と割と密接な関係にあったり、土地の神父がヴァン・ヘルシングを召喚する設定は『吸血鬼ドラキュラの花嫁』(1960)を彷彿とさせる。 

 舞台はトランシルバニアのパスブルグなる宿場町と森を挟んだドラキュラ城のみで、かなりコンパクトにまとめられている。「パスブルグ」は、原語でPasso Borgoとなるので、「ボルゴ峠(Borgo Pass)」のもじりかと思われる。ここの町長はキスリンガー氏。ルーシーの父親でドラキュラ伯爵と交流があるようだ。従来の映画作品でいうところのジャック・セワードのポジションである。 

 本作では過去の作品でよくある蝙蝠への変身を避け、
梟、狼、蝿、ゴキブリ、巨大カマキリとバラエティに富んだ変身能力を披露している。特に巨大カマキリで登場するところは衝撃的だ。そもそも原作のドラキュラは原子レベルで身体を変化させることができる神出鬼没な怪物なので、ある意味では原作に忠実といえば忠実。アルジェント作品では稀な原作物という枠の中で、アルジェントらしさが顕著に出ていたのがこの「今までにない動物への変身シーン」であった。 

 ドラキュラに従属するレンフィールドが登場するが、従来のイカモノ喰いから人喰いに設定変更されているようだ。ドラキュラの従者としてもう一人、ゾランなる男が登場する。このゾランは映画冒頭でアルジェント作品の『インフェルノ』(1980)でのホットドッグ屋を思わせる行動を取る。知っている者なら思わずニヤリとしてしまうことだろう。 

 ドラキュラ役のトーマス・クレッチマンは『ヒトラー~最期の12日間』(2004)で注目されたドイツ人俳優で、ピーター・ジャクソンの『キング・コング』(2005)でのイングルホーン船長役で知られる。

 ミナ役は『ザ・ライト~エクソシストの真実』(2011)のマルタ・ガスティーニ。本作で映画出演は3作目となる。

 アルジェント映画特有の(?)セクシー枠は女吸血鬼タニアを演じたミリアム・ジョヴァネッリ。日本での紹介は『妹の誘惑』(2011・DVD発売のみ)がある。 

 特撮はセルジオ・スティバレッティの手による。『デモンズ』(1985)以降のアルジェント作品に深くかかわっており、現在のイタリアでは名実ともに第一人者の特撮マンで、『肉の蝋人形』(1997)では監督も務めた。