「シャーロック2」の第一話。

元ネタは「ボヘミアの醜聞」で、アイリーン・アドラーの暗躍を根底に、シャーロックの女性コンプレックスをあぶり出しながら、心の琴線に触れる恋愛劇を見せてくれる。

しかし、推理劇としてはちょっと難しい。イギリスにダメージを与えるテロリストとの攻防戦が描かれ、その陣頭指揮をとっているのがマイクロフトである。そのマイクロフトがシャーロックを作戦に引っ張り込むが、シャーロックのミスによって作戦が失敗に終わってしまう、という展開がある。

ここのところがよくわからなかったので、調べてみた。キーワードは「コベントリーの悲劇」。ナチスに潜ませた1人のスパイを助けるために、コベントリー市民3,000人をチャーチルが見殺しにした、という事件である。結局、このチャーチルの決断がナチズムの崩壊に繋がったという。

マイクロフトは「我々が爆弾を察知していることを相手方にばれた。」というのだが、これはどういうことなのだろう?

イギリス政府は、航空機の爆弾テロを察知していたのだが、スパイを潜入させていることをテロリストに知られたくないので、やむなく、指定の航空機を上空で爆破させるを得ないということになり、代わりに、乗客全員を死体にすり替える計画を数年に渡って遂行していた。いよいよ離陸となった前日、シャーロックがその計画の手前までの謎を解いてしまったために、「イギリス政府が爆弾の存在を知っていること」をテロリストにリークされ、作戦がオシャカになった、ということ。

ドラマでは語られないが、何が起こったか?というと、英国政府が爆弾を察知していることを知られたことによって、テロリストにスパイの存在が知られ、大切な情報網が寸断された、つまり国家をさらに危険に晒してしまった、ということ。この作戦は、「コベントリーの悲劇」の裏をかいた、高尚な作戦だった、ということである。

マイクロフトは、CIAと結託して、テロリストと闘っていたわけで、ここが物語の肝となるのだが、外国人視聴者にはとてもわかりづらい。

物語は当初、「エリザベス女王の若き日のスキャンダラスな画像がアイリーンのスマホに入っている」ということでシャーロックはスマホの奪還を依頼されるが、実はそれはカムフラージュで、重要なのはその他の文書ファイルだったのである。

この物語は、シリーズの中でも登場人物が驚異的な動きを見せる一篇で、裏ストーリーとして、シャーロックがジェームス・ボンド張りの活躍をする。また、時間軸も長く、発端から終結まで1年近く費やしているようだ。