1895⇒1929

2010年5月アーカイブ

恐竜とミッシングリンク

 この作品は、ウィリス・H・オブライエンがカリフォルニア時代に製作・公開されたオブライエンの初期作品群の一本。オブライエンは16年にニューヨークに居を移し、エジソン社に移り、その際にこれらの作品群がエジソン社のロゴが追加プリントされ、再公開されている、という事情があるため、正確な製作年度は確定できない、という。
 オブライエンの処女作であり、最古のストップモーション・アニメ映画であるが、この時点でかなり複雑な動きが実現されている。
日の浅い映画ビジネスの世界では、さぞかし大きな可能性を示唆した事と思う。ことに、ワイルド・ウィリーの表情豊かな感情表現には目を見張るものがあり、そのまま観流すと「ワイルド・ウィリーが主人公の作品」にも取れる。
 これがストップモーションアニメの祖であるとするならば、世界で初めて銀幕に登場した(3Dの)恐竜は首長竜(=ブロントサウルス)ということになる。オブライエンの同時代の短編には首長竜が好んで使われたようだ。1917年の「R.F.D.10,000 B.C.」では、ブロンドサウルスに荷車を付けた郵便屋が登場する。25年の「ロストワールド」でも、クライマックスをブロントサウルスにロンドンを破壊させる等、なぜか「首長竜」に対する拘りが見てとられる。

「失われた映画」として知られていた一本。製作された当時は、映画は「使い捨てのコンテンツ」に過ぎず、公開済みのフィルムの管理はずさんだったようだ。1918年のエジソン社の閉鎖によって、同社の映画群のほとんどが行方不明となった。この「フランケンシュタイン」も例外ではなかった。
1963年にエジソンスタジオのカタログ「KINETOGRAM」が発見され、「怪物」のビジュアルと内容の詳細が明らかになった。プリント自体は1950年代にウィスコンシン州の映画コレクター、アロイス・F・デットラフ氏が手に入れた、とされるが、その出所がどこなのかは不明。デットラフ氏はそのフィルムがどれだけの価値があるのか1970年代に半ばまで知らなかったという。70年代後半、デットラフ氏はこのフィルムを保管するため、35ミリフィルムでコピーを作った。コピーの製作は世界最古のフィルム・アーカイヴ、「ジョージ・イーストマンハウス」による。現在では輸入DVDなどにより、エンドユーザーにも手軽に視聴可能になった。

世界初のフランケンシュタイン映画で、現在確認できるフィルムは正味10分少々(記録では16分)。その中で創造物製造のシーンが長く割かれているが、原作のポイントはほとんど抑えられている。
オリジナルが確認できないので何ともいえないが、少なくとも劇中にフランケンシュタインが、エリザベスに当てた手紙が映し出される。「実験が成功した暁には結婚して欲しい」というプロポーズの手紙である。それによって一気に映画の内容を観客に説明する、という大胆な方法がとられている。そのためか、短い上演時間ながらも非常に密度の濃い内容になっている。

チャールズ・オーグル扮する「創造物」はズタボロでグロテスクな様相。カーロフのモンスターが誕生するより20年も前であるが、インパクトは絶大で、寝室に現れる気味の悪さや、クライマックスの暴れっぷりもなかなかのものである。

クリスマスキャロル

スクルージにこき使われる、ボブ・クラチットを「フランケンシュタイン(1910)」のチャールズ・オーグルが扮している。「フランケンシュタイン」もそうだが、原作の全てのポイントを抑えている。さすがに駆け足な展開は否めないが、大体のあらすじは描けており、原作に忠実といえば忠実である。