1940⇒1949

吸血鬼の最近のブログ記事

夜の悪魔

 怪奇色、というよりは愛憎劇の向きが強い。
 ヒロインのキャサリンは完全に「悪女」であり、ドラキュラに血を吸わせて自分が不死者となり、恋人であるフランクの血を吸ってフランクを不死者にし、「永久の愛」を成就させようとする。当然、役目を果たしたドラキュラは始末する、という念の入った「ドラキュラ暗殺計画」を企てるのである。また、フランクもそれを了承してしまう。
 何と言っていいか・・・吸血鬼を倒す側がグレーな人たちで、敵役の吸血鬼が結果として犠牲者というポジションになる。

 ドラキュラは祖国ハンガリーが荒れ果てたために、若さみなぎるアメリカに身を移し、愛する人と幸せに暮らすために渡米してきたのだが、間男した上に女にだまされ、その女のイロに滅ぼされる、というなんとも情けないメロドラマである。
 普通のドラマならば、フランクとキャサリンは計画的な殺人を犯す「犯罪者」である。マクベス夫妻のようなものであるが、ターゲットが吸血鬼だったので「まあいいか」という空気が流れる。一人まともな保安官が混乱するばかり。

 「吸血鬼」という存在の扱いがひどく、「忌むべき者」という要素がまったく無い。逆にその能力を利用して「幸せになろう」という、吸血鬼映画の暴挙である。