1940⇒1949

夜の悪魔(1943)

"SON OF DRACULA"
アメリカ / ユニバーサル

[Staff]
制作:フォード・ビーブ
監督:ロバート・シオドマク
脚本:エリック・テイラー
原作:カート・シオドマク
撮影:ジョージ・ロビンスン
音楽:ハンス・J・サルター
配給:ユニバーサル

[Cast]
ドラキュラ/アルカード・・・ロン・チャニー
フランク・スタンレー・・・ロバート・ペイジ
キャサリン・・・ルイーズ・オールブリットン
クレア・・・イヴリン・アンカース
ブルースター博士・・・フランク・クレーヴン
ラザロ教授・・・J・エドワード・ブロムバーグ
シモンズ判事・・・サミュエル・S・ハインズ
クイーン・ジンバ・・・アドリーン・ドワルト・レイノルズ
保安官・・・パトリック・モリアリティ
サラ・・・エッタ・マクダニエル

[Story]
フランクとキャサリンは幼馴染みであり婚約をしていたが、キャサリンはハンガリーに旅行した時のアルカード伯爵との出会いで心変わりをした。
アルカード伯爵がダークオークスにやってくる。しかし、駅に到着したのは荷物だけで、伯爵の姿は無かった。出迎えたブルースター博士は、その荷物の名前を見て眉根をひそめる。アルカードの名前を逆から読むと「ドラキュラ」となるのだった。

博士は、吸血鬼ドラキュラ研究の権威、ラザロ教授に伺いを立てる。教授は「その存在は決して否定できない」と吸血鬼の存在を示唆する。もろもろの調査の結果、アルカード伯爵は吸血鬼ドラキュラその人であることがわかった。

そして、伯爵が到着して早々、キャサリンは伯爵と結婚。その直前、キャサリンの父であるコールドウェル大佐が、伯爵の歓迎パーティの直後、不信な死を遂げており、キャサリンとその姉クレアは、莫大な遺産を相続することになっていた。伯爵とキャサリンの結婚に激怒するフランクは、伯爵に銃弾を浴びせるが、弾は伯爵を貫通し、背後にいたキャサリンに当たってしまう。その場で絶命するキャサリン。しかし、その後屋敷を訪れたブルースター博士の前にキャサリンが現れた。彼女は吸血鬼となって復活したのだ。

ブルースター博士はラザロ教授と共にドラキュラ討伐に乗り出すが、裏でもうひとつの策略がうごめいていた。

[Text]

 怪奇色、というよりは愛憎劇の向きが強い。
 ヒロインのキャサリンは完全に「悪女」であり、ドラキュラに血を吸わせて自分が不死者となり、恋人であるフランクの血を吸ってフランクを不死者にし、「永久の愛」を成就させようとする。当然、役目を果たしたドラキュラは始末する、という念の入った「ドラキュラ暗殺計画」を企てるのである。また、フランクもそれを了承してしまう。
 何と言っていいか・・・吸血鬼を倒す側がグレーな人たちで、敵役の吸血鬼が結果として犠牲者というポジションになる。

 ドラキュラは祖国ハンガリーが荒れ果てたために、若さみなぎるアメリカに身を移し、愛する人と幸せに暮らすために渡米してきたのだが、間男した上に女にだまされ、その女のイロに滅ぼされる、というなんとも情けないメロドラマである。
 普通のドラマならば、フランクとキャサリンは計画的な殺人を犯す「犯罪者」である。マクベス夫妻のようなものであるが、ターゲットが吸血鬼だったので「まあいいか」という空気が流れる。一人まともな保安官が混乱するばかり。

 「吸血鬼」という存在の扱いがひどく、「忌むべき者」という要素がまったく無い。逆にその能力を利用して「幸せになろう」という、吸血鬼映画の暴挙である。