1940年代

1940⇒1949
 

夜の悪魔

 怪奇色、というよりは愛憎劇の向きが強い。
 ヒロインのキャサリンは完全に「悪女」であり、ドラキュラに血を吸わせて自分が不死者となり、恋人であるフランクの血を吸ってフランクを不死者にし、「永久の愛」を成就させようとする。当然、役目を果たしたドラキュラは始末する、という念の入った「ドラキュラ暗殺計画」を企てるのである。また、フランクもそれを了承してしまう。
 何と言っていいか・・・吸血鬼を倒す側がグレーな人たちで、敵役の吸血鬼が結果として犠牲者というポジションになる。

 ドラキュラは祖国ハンガリーが荒れ果てたために、若さみなぎるアメリカに身を移し、愛する人と幸せに暮らすために渡米してきたのだが、間男した上に女にだまされ、その女のイロに滅ぼされる、というなんとも情けないメロドラマである。
 普通のドラマならば、フランクとキャサリンは計画的な殺人を犯す「犯罪者」である。マクベス夫妻のようなものであるが、ターゲットが吸血鬼だったので「まあいいか」という空気が流れる。一人まともな保安官が混乱するばかり。

 「吸血鬼」という存在の扱いがひどく、「忌むべき者」という要素がまったく無い。逆にその能力を利用して「幸せになろう」という、吸血鬼映画の暴挙である。

夢の中の恐怖

dead_of_night.jpgのサムネール画像英国を代表する4人の作家の原作による怪談を、英国を代表する4人の監督が演出したホラー・アンソロジー。
マーティン・スコセッシが選ぶ「映画史上最も怖いホラー映画11本」"11 Scariest Horror Movies of All Time"の中の一本としてランキングされている。
その後のアミカス社のオムニバス・ホラーに多大な影響を与えた作品である。

1940年代にはイギリスにホラー映画は規制によりほとんど存在していなかった。その中で本作が作られたのは、快挙ともいえる出来事だったという。
「おそらくホラー映画とはみなされなかったのだろう(石田 一)」

初期のハマー・ホラーの常連だったマイルス・モーリソンが出演している。

青ひげ

はじめに断っておくが、ストーリーは謎解きの要素が押し出されたような書き方になったが、犯人は本編早々にわかる。ストーリーをそのまま書いていたら大変な長文になってしまうので割愛した。「青ひげ」と呼ばれる連続殺人鬼と、それを追う警察との攻防戦の物語である。60分少々の短い作品であるが、脚本は実に緻密で、事件発生から解決までの複線が、ところ狭しと盛り込まれている。犯人は芸術家のガストン・モレル。目をつけた女性を画のモデルとして口説くが、肖像画を描いて、飽きると絞殺してセーヌ河に捨てる、という偏執狂の殺人鬼である。この殺人犯には、芸術家として悲しい過去があり、それが元で殺人に走ったが、実のところ殺人が癖になっていた。
人当たりの良い、二枚目のシリアル・キラーをジョン・キャラディンが器用に演じている。
残酷描写こそないものの、時代を考えるとかなり衝撃的なものだったのではないだろうか?「殺人の暗示」が観客の想像力を掻き立てる。描き方がいちいち陰惨で、後味が悪いことこの上ない。また、事件解決なるも大団円とはいかず、この手のサスペンス物には珍しく、多くの犠牲者を出すことも特筆すべきだろう。

Bluebeard_03.jpg監督はエドガー・G・ウルマー。「黒猫(1934)」「驚異の透明人間(1960)」などの監督である。オーストリア出身で「巨人ゴーレム(1920)」「メトロポリス(1926)」「サンライズ(1927)」「M(1931)」などのアートディレクターでもある。

この作品はPRC(Producers Releasing Corporation)の作品である。ベラ・ルゴシ主演の「DEVIL BAT」など、低予算のスリラー映画を得意とした会社である。