1940⇒1949

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 今では幽霊屋敷をテーマにしたホラー映画は数多いが、本作は「邸に獲りついた幽霊が心霊現象を起こす怪談」をシリアスに描いた先駆的な作品。それまでアメリカ映画では「幽霊」はコメディ映画で扱われることが通例であった。本作はホラー映画としてよりも、その幽霊の正体が何者なのか?というミステリーとしての向きが強い。英国から招かれたルイス・アレンは当初幽霊を登場させるつもりはなかったが、最終的にパラマウントの判断で幽霊の存在を強調するため、特殊効果による幽霊の描写を加えることになった。英国では1940年代は怪奇映画への検閲が厳しい時代で、その描写はカットされた状態で上映されたが、批評家筋からはその暗喩的な演出は歓迎されたという。ともあれ、本作は以後の「幽霊屋敷物」のステータスを確立した。

 映画の中ではロデリックがステラの前で弾くピアノの即興曲は「星影のステラ」である。ヴィクター・ヤングの有名なジャズ・ナンバー「星影のステラ」は本作のために作られたもの。

 主演のレイ・ミランドはこの作品の出演時点ですでに大スターの一人で、彼はこの翌年にビリー・ワイルダー監督作品『失われた週末』(1945)でアカデミー賞主演男優賞を受賞することになる。ビーチ中佐に扮するは 映画創世記以来、ハリウッドの著名な映画人の一人であるドナルド・クリスプ。TVシリーズの『バットマン』でアルフレッドを演じたアラン・ネイピアがスコット医師に扮する。ヒロインのステラはジョン・ウェインの『拳銃無宿』(1947)で日本でも人気を博したゲイル・ラッセル。制作は『失われた週末』(1945)、『サンセット大通り』(1950)などでビリー・ワイルダーとのコンビで知られるチャールズ・ブラケット。スタッフ、キャストともに超一流が顔を揃えた作品である。

※アメリカン ホラーフィルム ベストコレクション DVD BOX Vol.1 発売元:ブロードウェイ 解説書 著:柳下 毅一郎 参照