「フランケンシュタイン(1931)」の続編で、物語に感激したバイロン卿がメアリー・シェリーを称賛するエピソードから始まり、メアリーの「この話には続きがあるの」という「マクラ」が差し込まれる。メアリーシェリーに扮しているのは、「花嫁」役のエルザ・ランチェスターである。ちなみに、そのくだりで大きな犬を二匹連れた女中が一瞬登場するが、これはミニー役のウーナ・オコナーだという。
初作と物語は繋がっているが、様々な変更点があり、つじつまが合わない点がいくつか。
・初作ではいなかったフランケンシュタイン家の女中ミニーの登場
・マリアの父親の名前がルドヴィックからハンスに変更されている。
・「フランケンシュタイン男爵」は初作ではヘンリーの父のことであったが、本作では父が存在せず、ヘンリー=男爵となっている。
等々。
モンスターは「全身に火傷を負っている」という設定で、時間の経過によって治癒していくようにメイクアップが施されている。
本作では、ボリス・カーロフの名は「KARLOFF」と苗字のみの表示となっている。「苗字で呼ばれる」というのはハリウッドにおける大スターの証であるという。「フランケンシュタイン・モンスター」は、単にホラー映画のキャラクターだけにとどまらず、アメリカ映画の象徴的な存在であったことが垣間見えるエピソードである。
1998年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録されている。
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ユニバーサルでのボリス・カーロフ最後のフランケンシュタイン・モンスターである。
また、ユニバーサル社が経営不振で経営陣が変わった後の第一作目の作品でもあり、怪奇映画としては破格の制作費が投じられたという。
「フランケンシュタイン(1931)」「フランケンシュタインの花嫁(1935)」と合わせて、この3本を「聖典」という。
本作ではフランケンシュタイン博士の長男・ウォルフが登場する。当初はピーター・ローレが演ずる予定であったが、諸事情により格上のバジル・ラスボーンが演ずることになった。
セットがドイツ表現主義映画を意識したものになっており、監督も変わったこともあってか、前二作とは作風にも顕著な違いが見られる。
モンスターの活躍自体は研究室内部と、城下の一部と最小限に抑えられており、その分台詞でモンスターの脅威が重厚に描かれている。乗じて、モンスターの強靭さや巨大さが台詞で表現されるが、描写としてはモンスターの巨大さが表現されている演出がなされていない。これがウォルフ役が背の低いピーター・ローレだったならばモンスターの巨大さも幾分強調されていただろうが、ボリス・カーロフの身長180cmに対して、バジル・ラスボーンの身長187cmであることも災いしてか、上げ底靴と頭頂のメイクをもってしても、モンスターとウォルフの身長があまり変わらない。ちなみにカーロフは、イゴール演ずるルゴシよりも身長は低いのである。
そのこともあってか、本作のモンスターは前二作よりも頭が長い。
初代フランケンシュタイン博士の名前がヘンリーからハインリッヒに変更されている。
「フランケンシュタイン」の名は、前作「フランケンシュタインの花嫁」で怪物の名前と混同されるようになったが、本作の冒頭でその点に言及されている。
汽車の中でのウォルフ夫婦の会話においてウォルフが「助手の失態で創造物が怪物になった。人々はその怪物をこう呼ぶ・・・」と名前を口にしようとすると、列車内のアナウンスで「フランケンシュタイン!(次はフランケンシュタイン駅)」と結ばれる。このあたりの演出はなかなか上手い。この演出技法はすでに「魔人ドラキュラ(1931)」でも使われている。
メル・ブルックス監督による「ヤング・フランケンシュタイン」のストーリーは、この作品をベースとしている。
1930年代初頭の作品としてはかなり躍動的な印象がある。本作に比べると「魔人ドラキュラ」は非常に冗長で静的であるが、むしろ「魔人ドラキュラ」の方が当時の作風とも言え、逆に言えば本作「フランケンシュタイン」は当時としてはかなり斬新でショッキングな作品だったといえるのではないだろうか?
モンスターのメイクアップは特殊メイクアップの歴史の中でも最も有名であり、「特殊メイクのカリスマ」的な位置づけである。メイクを手掛けたのはジャック・P・ピアース。当時はラバー素材が存在しなかったので、水糊や水絆創膏等の素材を駆使して、撮影の日ごとにモンスターのメイクを造型していった。そのため、シーンによって若干メイクに相違が生じているが、逆にいえば、その日その日にメイクを造形したにしては、映画全体として整合性が取れている。
アメリカフィルム登録簿(国家の責任によって永久保存される)に1991年に登録されている。ちなみに1989年の制度導入以来、ホラー映画としては初めてである。?