1930⇒1939

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 月世界旅行をテーマとしたSF映画。現代ロケット工学の基礎的理論を構築し「宇宙旅行の父」と呼ばれたロケット理論の開発者コンスタンチン・ツィオルコフスキーを顧問として招き、当時の最先端科学の成果を緻密に映像化。ロケットの打ち上げや無重力遊泳、月世界探検等を当時の特撮技術の粋を尽くしてシミュレートされている。当時のソ連映画はプロパガンダの一環としての位置づけであったが、体制下で厳しい制約の中での映画製作を余儀なくされていたにもかかわらず、ユーモアあふれる作品に仕上がっていることは称賛に値する。

 当時のソ連ではまだサイレント映画がトーキー映画と並行して製作されていた時代で、本作はサイレント映画として作られたが、トーキーへの意識が非常に高く、サイレント映画であっても台詞字幕は、あたかも言葉が発せられているかのようにモンタージュの中に組み込まれた。本作もまたその方式に則った作品であり、サイレント映画であることを観客に意識させない字幕の在り方には、製作者の努力が垣間見られる。

 本編前半のロケットの格納庫の情景からロケット発射までの見事なまでのミニチュア・ワークは目を見張る。円谷特撮のミニチュア・ワークの原点がここにあった。そして、後半の見どころとなる月世界探検のシーンをハリウッドを圧倒するハイ・クオリティなモデル・アニメーションで表現しており、これもまた見事としか言いようが無い。

 日本では2001年8月4日より、東京三百人劇場で開催された「ロシア映画の全貌2001」にて初めて上映された。

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「フランケンシュタイン(1931)」の続編で、物語に感激したバイロン卿がメアリー・シェリーを称賛するエピソードから始まり、メアリーの「この話には続きがあるの」という「マクラ」が差し込まれる。メアリーシェリーに扮しているのは、「花嫁」役のエルザ・ランチェスターである。ちなみに、そのくだりで大きな犬を二匹連れた女中が一瞬登場するが、これはミニー役のウーナ・オコナーだという。

初作と物語は繋がっているが、様々な変更点があり、つじつまが合わない点がいくつか。

・初作ではいなかったフランケンシュタイン家の女中ミニーの登場
・マリアの父親の名前がルドヴィックからハンスに変更されている。
・「フランケンシュタイン男爵」は初作ではヘンリーの父のことであったが、本作では父が存在せず、ヘンリー=男爵となっている。

等々。

モンスターは「全身に火傷を負っている」という設定で、時間の経過によって治癒していくようにメイクアップが施されている。

本作では、ボリス・カーロフの名は「KARLOFF」と苗字のみの表示となっている。「苗字で呼ばれる」というのはハリウッドにおける大スターの証であるという。「フランケンシュタイン・モンスター」は、単にホラー映画のキャラクターだけにとどまらず、アメリカ映画の象徴的な存在であったことが垣間見えるエピソードである。

1998年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録されている。

本格的な狼男を扱った世界初の作品。

この作品が作られる3年前に、パラマウントで「ジキル博士とハイド氏(1932)」(ルーベン・マムーリアン監督)が公開されている。
研究家の間ではしばしば、本作と「ジキル博士とハイド氏」の因果関係が語られるようだ。
徳の高い科学者が研究の暴走の結果、凶暴な獣人に変化してしまう、というプロットはスティーブンソンの「ジキル博士とハイド氏」そのもので、同作が無声映画時代から好まれて制作されたことを考えると、「倫敦の人狼」、強いては後年の狼男それ自体が「ジキル博士とハイド氏」の亜流とも言えるのではないだろうか?

狼男のメイク・アップはジャック・P・ピアース、特撮は戦前アメリカ映画の特撮王、ジョン・P・フルトン。「最古の狼男映画」とはいっても、その特撮技術はすでに完成されていて、手間のかかったものである。グレンドン博士の顔に隈ができる変身シーンは、前出の「ジキル博士とハイド氏」のそれと同一のものだった。

グレンドン博士の妻、リサに扮するのはヴァレリー・ホブスン。彼女は同時期、「フランケンシュタインの花嫁」でもフランケンシュタイン博士の妻、エリザベスにも扮しており、すっかり「怪奇な嫁女優」だ。撮影当時18歳というから、これまた随分・・・。

ワーナー・オーランド扮するヨガミ博士は、当初ベラ・ルゴシが予定されていたらしいが実現せず、後に「THE WOLFMAN(狼男の殺人)」で同じような役をやることになる。考えたらルゴシは、ドラキュラ、フランケンシュタインの怪物、狼男と三大モンスターを演じているのだが、ドラキュラ以外が「かすっている」ようなものなので、あまりそんな感じがしない。そもそも「THE WOLFMAN」では狼男役ではあったけれども、具体的なメイクはしていないし。そのかわり「獣人島(1932)」で獣人メイクはしている。

2010年公開の「ウルフマン」のアンソニー・ホプキンス扮する狼男は、本作の設定がベースとなったものだ。