1930⇒1939

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 主演のライオネル・バリモアは俳優の名門バリモア家の長兄で、ジョン・バリモアを弟に、エセル・バリモアを妹に持つ。ドリュー・バリモアの大伯父にあたる。『グランド・ホテル』(1932)、『椿姫』(1936)、『我が家の楽園』(1938)、『素晴らしき哉、人生!』(1946)といった名作映画への出演が続く中で『古城の妖鬼』(1935)や本作のような怪奇テイストの作品にも幾多と顔を出した。

 本作はトッド・ブラウニングが無声映画時代に発表したロン・チャニー主演の『三人』(1925)のセルフ・リメイクである。自身の『London after Midnight』(1927)もまた『古城の妖鬼』(1935)としてセルフ・リメイクしている。

 月世界旅行をテーマとしたSF映画。現代ロケット工学の基礎的理論を構築し「宇宙旅行の父」と呼ばれたロケット理論の開発者コンスタンチン・ツィオルコフスキーを顧問として招き、当時の最先端科学の成果を緻密に映像化。ロケットの打ち上げや無重力遊泳、月世界探検等を当時の特撮技術の粋を尽くしてシミュレートされている。当時のソ連映画はプロパガンダの一環としての位置づけであったが、体制下で厳しい制約の中での映画製作を余儀なくされていたにもかかわらず、ユーモアあふれる作品に仕上がっていることは称賛に値する。

 当時のソ連ではまだサイレント映画がトーキー映画と並行して製作されていた時代で、本作はサイレント映画として作られたが、トーキーへの意識が非常に高く、サイレント映画であっても台詞字幕は、あたかも言葉が発せられているかのようにモンタージュの中に組み込まれた。本作もまたその方式に則った作品であり、サイレント映画であることを観客に意識させない字幕の在り方には、製作者の努力が垣間見られる。

 本編前半のロケットの格納庫の情景からロケット発射までの見事なまでのミニチュア・ワークは目を見張る。円谷特撮のミニチュア・ワークの原点がここにあった。そして、後半の見どころとなる月世界探検のシーンをハリウッドを圧倒するハイ・クオリティなモデル・アニメーションで表現しており、これもまた見事としか言いようが無い。

 日本では2001年8月4日より、東京三百人劇場で開催された「ロシア映画の全貌2001」にて初めて上映された。