1970⇒1979

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燃える昆虫軍団

 劇場にホラー映画と連動したドッキリ・ギミックを仕掛けたり、映画を観てショック死した観客に保険金を払うと大風呂敷を広げたりと、そのショウマン・シップで知られたプロデューサー、ウィリアム・キャッスルの遺作となった。キャッスルはこの映画で虫が這う感覚を体感させるために客席に観客の足元をブラシでこするギミックを考えていたがこれは実現しなかった。
 監督は『ジョーズ2』(1978)、『ある日どこかで』(1980)、『スーパーガール』(1984)で知られるヤノット・シュワルツ。

 70年代の動物パニック映画ブームに乗って製作された一本であるが、昆虫をミュータントとして描いているSF映画でもある。「放火習性のあるゴキブリ」というと非常にバカバカしい趣ではあるが、架空の原始生物でありながらその生態が非常に細かく設定されており、それを利用して2段階の進化を遂げる過程の演出は実に丁寧だ。同時に、一介の生物学者に過ぎなかったジェームスが新種開発に手を染めるマッド・サイエンティストへと変貌していく様も、冒頭の教会、信心深い妻、聖書、といった「神」のキーワードと相まって、「科学の暴走」を示唆することになる優れた演出。

 ジェームスを演じるブラッドフォード・ディルマンは70年代には本作の他に『大襲来!吸血こうもり』(1975)、『スウォーム』(1978)、『ピラニア』(1978)と動物パニック映画に次々と出演する。

 クライマックスで惨死するキャリーの友人、シルヴィアに扮するは『悪い種子』(1956)の名子役、パティ・マコーマックである。