1970⇒1979

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バンパイアキラーの謎

AIPとアミカスの提携作品として製作された、ピーター・サクソンの小説『The Disorientated Man(混乱させられた男)』(1967)の映画化作品。原作には忠実だという。

ジョギング中に何者かに隔離され、四肢を次々に奪われていく男。冷戦下における東西諜報部の情報の奪い合い、世間を騒がす猟奇連続殺人、といった、一見無関係に見える事象が交錯し、物語が進むにつれて一つの大きな陰謀にたどり着く。

 原作では事件はエイリアンの陰謀であることが明らかになり、映画もラストはエイリアンの存在を明らかにするものだったが、結果的にそれらの要素は全てカットされ、黒幕の正体は不可解なままにされ、正体不明の優等民族の存在が仄めかされる。ヴィンセント・プライス、クリストファー・リー、ピーター・カッシングの三大怪奇スターの共演が嬉しい。三人が同じ場面に勢ぞろいしないのは寂しいところだが、それぞれのエピソードの頭領としてその存在感を発揮している。悪役のコンラッツとその上司ベネデク少佐(ピーター・カッシング)のシーンのやり取りは、ダースベイダーとターキン総督を彷彿させるもので、考えてみれば、コンラッツに肩に触れられただけで死んでしまうトボけた設定もフォースに見えなくもない。また、優等民族が人間をスクラップ・アンド・ビルドすることで優秀な合成人間に作り替え、それを軍隊にする計画を示唆し、劣等人種である人類を粛清し、優等民族の世界を目指す帝国軍的な優生思想など、深く分析していくと『スターウォーズ』の原型がそこにはあるようにも思える。

 事件を捜査する検死官ソレルに扮するのはクリストファー・マシューズ。ハマー・ホラーのファンには『ドラキュラ復活!血のエクソシズム』(1970)のポール役でお馴染みだ。ハマー・ホラーと言えば『恐怖の吸血美女』(1971)の女吸血鬼ミアカーラに扮したユッテ・ステンスガード、『吸血狼男』(1960)、『ドラキュラ血の味』(1969)のピーター・サリスも顔を出している。

未来惑星ザルドス

 難解と思われると判断した監督のジョン・ブアマンは、内容を補てんするためにアーサー・フレインの解説をプロローグとして挿し込んだが、それでも難解さは回避されなかったという。
 「ザルドス(Zardoz)」は『オズの魔法使い(Wizard of Oz)』を語源とする造語で、発音は「ザードス」の方が近い。

 制作費は僅か100万ドルという低予算で、そのうちショーン・コネリーの出演料は20万ドルだった。コネリーのギャラは監督のジョン・ブアマンが自腹を切って支払われた。

 神殿(指輪)の声を担当しているデヴィッド・デ・キーサーはアフレコのキャリアが多く、ハマー・ホラーの『吸血鬼サーカス団』(1971)のミッターハウス伯爵の声(呪詛の台詞しかない)や、『ドラゴンVS.7人の吸血鬼』(1974)のドラキュラ伯爵の声を当てている。

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燃える昆虫軍団

 劇場にホラー映画と連動したドッキリ・ギミックを仕掛けたり、映画を観てショック死した観客に保険金を払うと大風呂敷を広げたりと、そのショウマン・シップで知られたプロデューサー、ウィリアム・キャッスルの遺作となった。キャッスルはこの映画で虫が這う感覚を体感させるために客席に観客の足元をブラシでこするギミックを考えていたがこれは実現しなかった。
 監督は『ジョーズ2』(1978)、『ある日どこかで』(1980)、『スーパーガール』(1984)で知られるヤノット・シュワルツ。

 70年代の動物パニック映画ブームに乗って製作された一本であるが、昆虫をミュータントとして描いているSF映画でもある。「放火習性のあるゴキブリ」というと非常にバカバカしい趣ではあるが、架空の原始生物でありながらその生態が非常に細かく設定されており、それを利用して2段階の進化を遂げる過程の演出は実に丁寧だ。同時に、一介の生物学者に過ぎなかったジェームスが新種開発に手を染めるマッド・サイエンティストへと変貌していく様も、冒頭の教会、信心深い妻、聖書、といった「神」のキーワードと相まって、「科学の暴走」を示唆することになる優れた演出。

 ジェームスを演じるブラッドフォード・ディルマンは70年代には本作の他に『大襲来!吸血こうもり』(1975)、『スウォーム』(1978)、『ピラニア』(1978)と動物パニック映画に次々と出演する。

 クライマックスで惨死するキャリーの友人、シルヴィアに扮するは『悪い種子』(1956)の名子役、パティ・マコーマックである。