死体解剖記(1959)

"THE FLESH AND THE FIENDS"
イギリス / トリアード・プロ

[Staff]
制作:ロバート・S・ベイカー、モンティ・バーマン
監督:ジョン・ギリング
脚本:ジョン・ギリング、レオン・グリフィス
音楽:スタンリー・ブラック
配給:リーガル・インターナショナル

[Cast]
ノックス・・・ピーター・カッシング
バーク・・・ドナルド・プレザンス
ヘア・・・ジョージ・ローズ
ジャクソン・・・ジョン・ケアニ―
メアリー・・・ビリー・ホワイトロー

[Story]
19世紀初頭のエジンバラ。解剖学が異端とされていた時代のことである。エジンバラ医学校での解剖学の権威ノックス博士(ピーター・カッシング)の講義は医学生たちから好評を博していた。しかし、教材、研究のための解剖用遺体は合法的に仕入れることが難しく、頭を痛めていた。これはイギリス医学界の慢性的な問題であった。ノックスはをバーク(ジョージ・ローズ)とヘア(ドナルド・プレザンス)の二人組の『復活屋』から仕入れていた。墓荒らしをすることで「品物」を調達していた二人は、より新鮮な死体の方が高く売れるために、殺人を犯すようになる。しかし、ノックス博士の弟子であるジャクソンの恋人を手にかけ、それを知り、怒りに震えるジャクソンをも手にかけた。ジャクソンの遺体はさすがにノックス博士の元へは持ちこめず、路傍に捨て去る。二人は、ジャクソンの殺人を知る少年ジムを手にかけたことにより、事件が発覚する。 バークは絞首刑に処され、ヘアは罪の自白とバークの裁判での証言により不起訴となるが、釈放後暴漢に襲われ、目を潰される。 ノックス博士は、世間からの非難にさらされるが、深く悔いる博士の真意を知り、誤解も解け、一度は彼の基を離れた生徒たちは彼の講義に戻り、拍手をもって博士を迎えるのであった。

[Text]

「バークとヘア連続殺人事件」の実話を基に作られた作品。
「オーメン(1976)」でベイロック夫人を演じた、ビリー・ホワイトローが被害者メアリーを演じている。
「フランケンシュタインの逆襲(1957)」で、子供時代のビクターを演じた メルビン・ヘイズの姿も見られる。
ともにバークとヘアの手にかかる。
このジム(メルビン・ヘイズ)の遺体とノックス(カッシングが)対面するシーンは、ちょっとニヤリとせざるを得ない。

Flesh and the Fiend.jpg★バークとヘア連続殺人事件 (1827-28)
19世紀初頭、イギリスのスコットランドはエジンバラ。
ウィリアム・バークとウィリアム・ヘアの二人組が、17人を殺害し、エジンバラ医学校に死体解剖用に売ったという事件。
取引は全てロバート・ノックス医師(1791‐1862)である。
1832年以前、イギリス医学界では、研究・教育の解剖用に合法的に得られる死体が慢性的に不足していた。19世紀にはいると医学の発達著しく、その需要は増えたが、『血の法典』の改正により、さらに供給が減り、そのため、死体調達の裏ビジネス(墓泥棒)が横行するようになる。
バークとヘアの事件はそんな時代に起きた。 当初は墓泥棒であったが、遺族の監視などで死体が手に入りにくくなったことと、より新鮮な死体の方が高く売れることなどから死体調達の方法が連続殺人に発展した。
事件発覚後、バークは死刑に処され、その体は皮肉にも、解剖用に回されて医学に貢献することになった。ヘアは犯行の自白とバークに不利な証言をすることで訴追を免れた。1829年に釈放、その後の消息は不明である。
バークとヘアは、ハマー・ホラー「ジキル博士とハイド嬢(1971)」にも登場する。