フランケンシュタインの逆襲(1957)

"CURSE OF FRANKENSTEIN"
イギリス / ハマー・フィルム・プロダクション

[Staff]
制作:マイケル・カレラス(製作総指揮)、マックス・ローゼンバーグ、アンソニー・ハインズ
監督:テレンス・フィッシャー
脚本:ジミー・サングスター
原作:メアリー・W・シェリー
撮影:ジャック・アッシャー
メイク:フィル・リーキー
音楽:ジェームス・バーナード
配給:ワーナー・ブラザーズ

[Cast]
ビクター・フランケンシュタイン男爵・・・ピーター・カッシング
エリザベス・・・へーゼル・コート
ポール・クレンプ・・・ロバート・アークハート
創造物・・・クリストファー・リー
ビクター(青年時代)・・・メルヴィン・ヘイズ
ジャスティン・・・ヴァレリー・ゴーント
バーンシュタイン教授・・・ポール・ハードムス
叔母・・・ノエル・フッド
盲目の老人・・・フレッド・ジョンソン
少年・・・クラウド・キングストン

[Story]
 幼くして男爵の称号を得たビクター・フランケンシュタインは、元来の天才気質と傲慢さで「人間の創造」という暴挙に出る。死体泥棒、臓器売買、殺人とあらゆる犯罪に手を染め、何とか「それ」を人の形にするものの、蘇生した創造物は脳に傷がついたことも手伝い、醜悪にして凶暴な怪物と化してしまった。世に放たれた創造物は人を殺し、ついにはビクターの許嫁とビクターを手にかけようとするが、寸でのところで火に包まれ、強酸槽に落ちて跡形もなく消え去ってしまった。
かくしてビクターは逮捕され「ありもしない創造物」の仕業であることを告白するが、それを信じる者はおらず、断頭台へと送られる。

[Text]
 戦前、アメリカのユニバーサル社がお家芸としたフランケンシュタイン映画を、戦後にイギリスのハマープロダクションが色鮮やかな総天然色で、装い新たに展開したシリーズの第一作目。ユニバーサルが「モンスターの恐怖」を主軸に描いたのに対して、作り手であるフランケンシュタイン男爵の「常軌を逸した所業」がストーリーベースである。 

 ピーター・カッシング扮する男爵は卑怯、狡猾、残忍と、人の思いつく悪を全てこなす「真正の悪人」として描かれる。己の信念に対して異様なまでに狂信的だ。 

「自分はひとかどの人物で、凄いことが出来るはずだ。失敗するのは全て無理解な他人の責任。」 

という困った人は現実世界でも度々見られるが、男爵はそういう人である。その男爵の目に余る行為の数々。 

・「買い物」から帰って来た男爵が嬉々として包みを開けると「人の手」が出てくる。 
・ブニョブニョした目玉をピンセットでつまんで見つめる男爵。 
・男爵に2階から突き落とされた老科学者が床に頭を叩きつけられる。 

といった、露骨な描写が次々に登場する。 

世界初の総天然色のフランケンシュタイン映画でのこと、当時の観客は卒倒したことであろう。そういう表現はそれまでに無かったのだから。 

 フランケンシュタイン映画につき物の「怪物」に扮するはクリストファー・リー。自らの意思を持たず、濁った眼差しでヨタヨタ歩きながら人を殺すだけ、という様は、「フランケンシュタインの怪物」というよりは、男爵の実験の「不出来な結果」に終始しており、まさにアン・デッド=歩く屍のそれであった。これはこれで説得力があって怖く、不気味だ。 

 この映画は、今となっては映画史の1つの事件であった。この作品を皮切りに、翌年の「吸血鬼ドラキュラ」が発表され、一大センセーションを巻き起こし、後のハマー・ホラーの隆盛、強いては60年代の怪奇映画ブームに繋がる。「吸血鬼ドラキュラ」がユニバーサルの経営危機を救った話は有名。次いで「クレオパトラ(1963)」で、倒産の危機に追い込まれた20世紀フォックスもまた、ハマーホラーの興業で難を逃れたとも言われる。 

 そして、ピーター・カッシングとクリストファー・リーの登場。 

 この映画は、戦後、映画ファンに送られた「最高のプレゼント」と言っても過言ではないだろう。

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