1960⇒1969

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ミイラ怪人の呪い

 ハマーのミイラ男シリーズ第三作目。15年に渡ってハマー・プロの作品を生み出してきたブレイ・スタジオで撮影された最後の作品である。

 古代エジプトの回想シーンのプロローグは7分に及ぶ。ナレーションは通説ではピーター・カッシングとされてきたがこれは間違いで実際のナレーターはティム・タナーである。同じくプロローグでファラオの従者役のディッキー・オーウェンは前作『怪奇ミイラ男』(1964)でミイラ男を演じた役者。また、ミイラ男に扮したのはエディ・パウエル。英国を代表するスタント・マンで、007シリーズをはじめ華々しいキャリアの持ち主である。ハマーではクリストファー・リーのスタント・マンとして知られ、ハマー・ホラーを語る上では外せない重要人物だ。『エイリアン』(1979)のスーツ・アクターでもある。

原題にある『Shroud』とは、古代エジプトで埋葬される際の死体を包む布のことで、日本で言うところの経帷子に当たる。テレビ放映される際にはこれを「王旗」としたが、イギリスでいうところの「王旗」は"Royal Standard"となる。実のところ日本語で本作の『Shroud』に該当する適当な言葉が無い。

怪奇ミイラ男

この時期のハマー・フィルムの作品のほとんどは、お馴染みの顔ぶれでホーム・グラウンドのブレイ・スタジオで作られていたが、本作はスタッフ、出演者共々ハマー作品未経験者が多く、撮影もエルストリート・スタジオで行われた。そのためか、ハマー・ホラーとしては少々異質な雰囲気を持つ作品である。主演はテレビ・シリーズ『シャーロック・ホームズ』(1954)でホームズを演じたロナルド・ハワード。ヒロインに扮するのはこの作品がデビュー作となるジャンヌ・ローランド、不死の呪いを受けたアダム=ビーを演じたのは『ハムレット』(1948)でレアティーズを演じたテレンス・モーガン。

ミイラ男のスーツアクターはディッキー・オーウェン。彼は次回作『ミイラ怪人の呪い』(1967)で冒頭の回想シーンでのプレム(ミイラ男の正体)を演じた役者である。

音楽はカルロ・マルテッリ。本作のテーマ曲は、そのまま『魔像ゴーレム 呪いの影』(1966)のテーマ曲として流用されている。

 監督のマイケル・カレラスは「ヘンリー・ヤンガー」名義で脚本も担当している。