1960⇒1969

AIPの最近のブログ記事

悪魔の宴

 1968年は『2001年宇宙の旅』『猿の惑星』『Night of the Living Dead』という革命的な作品が発表され、老舗のハマー・プロはイギリス経済に貢献した一企業としてエリザベス女王から叙勲され、ジャンル映画に取ってまさに最盛期の真っただ中であった。そんな最中に制作された本作はボリス・カーロフ、クリストファー・リー、バーバラ・スティール、マイケル・ガウ、ルパート・デイヴィスといった、新旧怪奇スターの豪華共演が楽しめる逸品。ボリス・カーロフにとっては、遺作ではないが、存命中に発表された最後の作品となる。 

 H・P・ラヴクラフトの短編小説『魔女の家の夢』に基づくが、物語はあまり似ていない。(執筆中)

アッシャー家の惨劇

60年代に入ってAIP(アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ)がシリーズ化したエドガー・アラン・ポー映画の第一作目である。これによってAIPのカラーが固まり、監督のロジャー・コーマンの名前もメジャーになったという。

原作では主人公が友人であるロデリックから助けを請う手紙を受け取り、アッシャー邸に赴いて不思議な体験をする、という幾分冗長な短編であったが、これをリチャード・マシスンが躍動的に脚色。マシスン本人が「脚色は楽しかった」と述懐している。

石造りの屋敷が燃え落ちるときに、何故か木造建築の天井か壁が焼け落ちるカットなど「突っ込みどころ」もあるのだが、まあそこはそれ、「細かいことは気にしていない思い切りの良さ」が、この作品、及びポー・シリーズが愛されている要因の一つだと思う。

幻想シーンで登場する幽霊のエキストラを除けば、この作品の登場人物は4人と非常に少ないがあまり気にならない。これは主演のヴィンセント・プライスの存在感の賜物だろう。彼の大仰な芝居は、少々滑稽ではあったが、ノイローゼ気味のロデリックをよく表現していた。

AIPの逸話はケチくさい物が多いが、それはそれなりの「美学」があるようで、必要最低限の状況の中、それを創意工夫で補っている。本作品に限らず、どの作品も実に手作り感あふれる作風である。

2005年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録。

恐怖の振り子

pitandpendulm02.jpgアッシャー家の惨劇(1960)」に続く、AIPのポー・シリーズ第2段。小説「落とし穴と振り子」「早すぎた埋葬」を基にリチャード・マシスンが脚色。
蓋を開けてみれば、「呪いを利用した財産横領の犯罪劇」であり、霊的な要素は全くないのでホラーというよりはサスペンス・スリラー映画だ。
しかし、冒頭の寂しい海岸、城から始まり、主人公が拷問室を去る最後まで「悪魔的」な雰囲気が絶えず、流れるように続くので恐怖色はとても強い。

見目麗しきエリザベスに扮するバーバラ・スティールの悪女っぷりが見どころである。
ポーの作品の特徴でもある「生き埋葬の恐怖」は、このシリーズでも何度となく使われるが、この「恐怖の振り子」のそれは、インパクトが大きく、ショッキング。
「この部屋は二度と開けない」と扉を閉めた後、鉄の箱に取り残されたバーバラ・スティールの恐怖に怯えた眼が、何とも怖い。

異端裁判に熱心だったニコラスの父親の思い出は、後年、ティム・バートン監督作品「スリーピーホロウ」でほぼそのまま引用されている。

ちなみに本作の象徴ともなっている「振り子」であるが、私のこの器具の原体験は子供の頃に観たテレビドラマ「江戸川乱歩シリーズ 死刑台の美女」だった。あまりに強烈なマシンだったので、しばらく夢に出てうなされた。よって、私はこの「振り子」が大嫌いである。