1960⇒1969

アッシャー家の惨劇(1960)

"THE FALL OF THE HOUSE OF USHER"
アメリカ / AIP

[Staff]
制作:ジェームス・H・ニコルソン(制作総指揮)、ロジャー・コーマン
監督:ロジャー・コーマン
脚本:リチャード・マシスン
原作:エドガー・アラン・ポー
撮影:フロイド・クロスビー
特撮:EntryDataEffect60
音楽:レス・バクスター、フィル・ミッチェル

[Cast]
ロデリック・・・ヴィンセント・プライス
フィリップ・・・マーク・デーモン
マデリーン・・・マーナ・ファーイ
ブリストル・・・ハリー・エラーブ

[Story]
青年フィリップは、婚約者マデリーンに会うためにアッシャー邸に赴いたが、マデリーンの兄、ロデリックに歓迎されなかった。ロデリックは「妹は間もなく死ぬ」と結婚には反対なのだ。アッシャー家の忌まわしい犯罪の歴史、一族の呪われた血を語る。納骨堂には先祖代々に加えて、存命しているロデリックとマデリーンの棺がすでに用意されている、という奇妙な状況を目の当たりにするフィリップ。そしてまもなくマデリーンは死に、その棺に埋葬される。しかし、マデリーンは死んではいなかった。時折「仮死状態」になる病を患っており、生きたまま埋葬されたのだ。その恐怖で気が触れたマデリーンが、棺から起き出し、フィリップとロデリックに恐ろしい形相で襲い掛かる。

[Text]

60年代に入ってAIP(アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ)がシリーズ化したエドガー・アラン・ポー映画の第一作目である。これによってAIPのカラーが固まり、監督のロジャー・コーマンの名前もメジャーになったという。

原作では主人公が友人であるロデリックから助けを請う手紙を受け取り、アッシャー邸に赴いて不思議な体験をする、という幾分冗長な短編であったが、これをリチャード・マシスンが躍動的に脚色。マシスン本人が「脚色は楽しかった」と述懐している。

石造りの屋敷が燃え落ちるときに、何故か木造建築の天井か壁が焼け落ちるカットなど「突っ込みどころ」もあるのだが、まあそこはそれ、「細かいことは気にしていない思い切りの良さ」が、この作品、及びポー・シリーズが愛されている要因の一つだと思う。

幻想シーンで登場する幽霊のエキストラを除けば、この作品の登場人物は4人と非常に少ないがあまり気にならない。これは主演のヴィンセント・プライスの存在感の賜物だろう。彼の大仰な芝居は、少々滑稽ではあったが、ノイローゼ気味のロデリックをよく表現していた。

AIPの逸話はケチくさい物が多いが、それはそれなりの「美学」があるようで、必要最低限の状況の中、それを創意工夫で補っている。本作品に限らず、どの作品も実に手作り感あふれる作風である。

2005年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録。