1960⇒1969

帰って来たドラキュラ(1968)

"DRACULA HAS RISEN FROM THE GRAVE"
イギリス / ハマー・フィルム・プロダクション

[Staff]
制作:アイダ・ヤング
監督:フレディ・フランシス
脚本:アンソニー・ハインズ
撮影:アーサー・グラント
メイク:ワンダ・ケリー(ヘアメイク)/ヘザー・ナース/ローズマリー・マクドナルド・ピーティ
特撮:フランク・ジョージ
音楽:ジェームス・バーナード
配給:ワーナー・ブラザーズ

[Cast]
ドラキュラ・・・クリストファー・リー
アーネスト・ミュラー司教・・・ルパート・デイヴィス
マリア・・・ヴェロニカ・カールソン
ジーナ・・・バーバラ・エーウィング
ポール・・・バリー・アンドリュース
神父・・・イワン・ホッパー
アンナ・・・マリオン・マシー
マックス・・・マイケル・リッパー

[Story]
ドラキュラが水中に没して1年が過ぎた。
城下の村では、教会がドラキュラに穢された為に、怯えた村人はミサに参加しなくなっていた。
その状況を打破するために、教区の司教は、教会の神父を伴って、ドラキュラ城へと向かい、祈祷を行って城を封印した。
しかし、神父が崖から滑落し、頭を打って気を失ってしまった。神父の頭から流れる血は傍の川へと流れ、そこで眠るドラキュラの口に滴り落ちた。かくしてドラキュラは復活し、城を封印した恨みで、司教とその姪のマリアを狙う。

[Text]

ハマーのシリーズ4作目。
監督はテレンス・フィッシャーから、カメラマンのキャリアを持つフレディ・フランシスに交代。


この作品では様々な演出が試みられた。
ロケーションの多用により、地理関係の広大さを明確にし、切り立った山頂に雲つくようにそびえ立つドラキュラ城であるとか、住宅街の屋根の上での追跡劇を加えることで「高さ」を演出。それまでにない舞台空間の広がりを、立体的に見せることに成功している。

ことに、「高さ」が強調されるシーンが多い。これによって「不安定」さが演出され、自然に心理的不安に駆られる。

また、ほのぼのとしたホームパーティのシーンに、狂ったように疾走するドラキュラの馬車のカットを差し込むといった、明暗の強調、これも神経にざらつく演出である。これらと、映画全般のどんよりした色調も手伝って、映画全体が実に陰惨で不安な空気を醸しだしている。

シリーズ中随一、不思議な雰囲気に包まれている作品だ。ジェームス・バーナードの音楽も、お馴染みだったドラキュラ・テーマを一新。宗教曲を取り入れた重い曲調となった。

テレンス・フィッシャーの演出とは違うが、これはこれで面白い。しかし、幾分ベットリし過ぎな感は否めない。

時は1968年。ホラー映画は「ナイト・オブ・ザ・リヴィングデッド」と「ローズマリーの赤ちゃん」の登場により、新たな時代を迎えていた。この時ハマーは頂点に達していた。本作の撮影中に、ハマーはエリザベス女王から、英国に多くの利益をもたらしたことで叙勲される栄誉に授かった。