1960⇒1969

フランケンシュタインの怒り(1964)

"EVIL OF FRANKENSTEIN"
イギリス / ハマー・フィルム・プロダクション

[Staff]
制作:アンソニー・ハインズ
監督:フレディ・フランシス
脚本:ジョン・エルダー
撮影:ジョン・ウィルコックス
メイク:ロイ・アシュトン
音楽:ドン・バンクス
配給:ユニバーサル

[Cast]
フランケンシュタイン男爵・・・ピーター・カッシング
ゾルタン・・・ピーター・ウッドソープ
警察署長・・・ダンカン・ラモント
ハンス・・・サンダー・エレス
物乞いの娘・・・ケイティ・ワイルド
村長・・・デビッド・ハッチソン
神父・・・ジェームス・マックスウェル
酔っ払い・・・ホワード・グーニー
村長夫人・・・キャロン・ガードナー
創造物・・・キウイ・キングストン

[Story]
 怪物を作った咎で村を追われたフランケンシュタイン男爵は、10年振りに村に戻ってきた。
時を経てもその悪名は風化することなく、またも村で追われる身となった男爵は山へ逃げた。そこで男爵は、口のきけない物乞いの娘の導きにより、洞の中で氷漬けになった怪物を発見した。男爵は研究を再開、怪物は蘇生した。しかし、怪物は10年前の山狩りの際に銃弾を頭に受けたために、外界からの刺激に反応を示さなかった。
 男爵は祭の催しで見た催眠術師・ゾルタンを招き、催眠術によって怪物を動かそうと試みる。思惑通り怪物は動き出したが、ゾルタンの命令でしか動かなかった。ゾルタンはそれをダシに、「研究に協力する見返りとして、怪物の興業の利権をよこせ」と男爵を脅迫したのだ。そしてゾルタンは怪物に盗みを働かせ、祭での無許可営業を取り締まられたことを逆恨みし、村長と警察署長の殺害を命じた。村長は惨殺され、警察署長の帽子をイタズラに被って遊んでいた夜勤の警官が署長の身代わりとなって殺された。
 怪物を悪行に使われた事を知った男爵は激怒し、ゾルタンを城から追い出すが、逆にゾルタンは怪物に男爵を襲わせた。しかし男爵の機転によって返り討ちにあい、ゾルタンは絶命した。
 男爵を逮捕した署長は怪物の存在を知り、村をあげて山狩りを決行する。

[Text]
 ハマーのシリーズ3作目。
 ハマーがワーナー・ブラザーズ配給でフランケンシュタイン(以後、F)映画を制作することになった時、当然のことながらユニバーサル社(以後、ユ社)のFシリーズ設定と怪物のメイクの使用許諾を得ることができず、苦肉の策でF男爵の悪行を物語の軸に据える格好で映画は完成した。ふたを開けてみればこれがヒットを飛ばし、結果としてユ社は苦虫を食いつぶすことになった。ハマー・ホラーの第二弾『吸血鬼ドラキュラ』(1958)が企画された際、ハマーは原作の映画化権を完全に掌握しているユ社に再び伺いを立てることになった。ハマーからすればこれは大きな賭けであったが、ユ社からすれば渡りに船で、世界配給を条件に『ドラキュラ』の映画化を許諾し、これが先の作品を超える大ヒットとなった。これによって屋台骨がかしいでいたユ社の経営は立ち直り、ハマー・ホラー第三弾『ミイラの幽霊』(1959)では、ユ社は『ミイラの復活
』(1940)の設定をハマーに完全貸与。以後、ハマーはユ社からの資金提供を得て、『吸血鬼ドラキュラの花嫁』(1960)、『吸血狼男』(1960)、『オペラの怪人』(1962)を制作していく。その流れで作られた作品が『フランケンシュタインの怒り』で、ここで初めてユ社のF映画の設定が許可された。めでたく、それまでのハマーのF映画のF男爵の悪行を軸とした物語の路線を踏襲しつつ、ユ社の巨大な人造人間=怪物を登場させることができたわけだ。
初作『逆襲編』は、続編『フランケンシュタインの復讐』(1958)をもって物語が完結しているため、本作はそれに干渉しない独立した一話完結の物語となっている。
 監督はテレンス・フィッシャーに変わって、当時新鋭であったカメラマン出身のフレディ・フランシス。怪物にはニュージーランド出身のプロレスラー、キウイ・キングストンが扮した。