1960⇒1969

1968年の最近のブログ記事

悪魔の宴

 1968年は『2001年宇宙の旅』『猿の惑星』『Night of the Living Dead』という革命的な作品が発表され、老舗のハマー・プロはイギリス経済に貢献した一企業としてエリザベス女王から叙勲され、ジャンル映画に取ってまさに最盛期の真っただ中であった。そんな最中に制作された本作はボリス・カーロフ、クリストファー・リー、バーバラ・スティール、マイケル・ガウ、ルパート・デイヴィスといった、新旧怪奇スターの豪華共演が楽しめる逸品。ボリス・カーロフにとっては、遺作ではないが、存命中に発表された最後の作品となる。 

 H・P・ラヴクラフトの短編小説『魔女の家の夢』に基づくが、物語はあまり似ていない。(執筆中)

帰って来たドラキュラ

ハマーのシリーズ4作目。
監督はテレンス・フィッシャーから、カメラマンのキャリアを持つフレディ・フランシスに交代。


この作品では様々な演出が試みられた。
ロケーションの多用により、地理関係の広大さを明確にし、切り立った山頂に雲つくようにそびえ立つドラキュラ城であるとか、住宅街の屋根の上での追跡劇を加えることで「高さ」を演出。それまでにない舞台空間の広がりを、立体的に見せることに成功している。

ことに、「高さ」が強調されるシーンが多い。これによって「不安定」さが演出され、自然に心理的不安に駆られる。

また、ほのぼのとしたホームパーティのシーンに、狂ったように疾走するドラキュラの馬車のカットを差し込むといった、明暗の強調、これも神経にざらつく演出である。これらと、映画全般のどんよりした色調も手伝って、映画全体が実に陰惨で不安な空気を醸しだしている。

シリーズ中随一、不思議な雰囲気に包まれている作品だ。ジェームス・バーナードの音楽も、お馴染みだったドラキュラ・テーマを一新。宗教曲を取り入れた重い曲調となった。

テレンス・フィッシャーの演出とは違うが、これはこれで面白い。しかし、幾分ベットリし過ぎな感は否めない。

時は1968年。ホラー映画は「ナイト・オブ・ザ・リヴィングデッド」と「ローズマリーの赤ちゃん」の登場により、新たな時代を迎えていた。この時ハマーは頂点に達していた。本作の撮影中に、ハマーはエリザベス女王から、英国に多くの利益をもたらしたことで叙勲される栄誉に授かった。

悪魔の花嫁

1877659442_199.jpgハマーのオカルト映画「悪魔の花嫁(1968)」は、デニス・ウィートリーの小説の映画化作品。


クリストファー・リーはウィートリーとは旧知の仲で、リーの後押しもあって本作は映画化された。脚本にはリチャード・マシスンがあたっている。

リーの談によると、彼が最も気に入っているハマー・ホラーの一本だという。

悪の首領モカタには、当初ゲルト・フレーベが予定されていた。

ド・リシュリュー公爵率いる5人の白魔術士のコミュニティが、モカタを教祖とした黒魔術のカルト教団と闘う物語だ。

1877659442_179.jpg宗教がからんでくることだし、日本で馴染みのない文化的誤差のためか、どうも日本では紹介されにくい作品である。

が、人物相関が東映の戦隊物とまるっきり同じなので、そこに気付くとすんなり物語に入れる。少なくとも私は。

原作では登場人物に細かな設定があるのだが、映画ではそこのところをすっ飛ばして、いきなり「大変なことが起きている!」「何、あいつが!?」と始まり、そのまま対決になだれ込んでしまうので、少々わかりづらい。

描かれていることは「悪の組織との最終決戦」で、黒魔術の首領・モカタは、黒い悪魔、骸骨騎士、大蜘蛛、といった"もののけ"を駆使して白魔術団に闘いを挑み、その黒幕である「悪魔」も、実体として登場する。

つまり、たくさんの怪人が登場し、総統もお出ましになり、組織が壊滅に追いやられる、という、戦隊物の最終回だけを、そのままやっているのだ。

いきなり最終回、である。

人物設定は、というと・・・

リシュリュー卿:熱血漢のリーダー。格の高い白魔術の使い手。=アカレンジャー
リチャード:冷静沈着。=アオレンジャー
レックス:力仕事担当=キレンジャー
マリー:紅一点のおばちゃん。リチャードの妻で、娘がいる。この人の呪文は爆弾級である。=モモレンジャー
サイモン:未熟な若者。こいつが黒魔術に手を染めたことが事件の発端となる。=ミドレンジャー。

まあ、この解釈はこじつけといえばこじつけなのだが、あながち間違ってもないと思うし、ここのところに気付けば、この作品も日本で少しばかり評価が高くなるかもしれない。

赤字怪談・いるいる

CMスタッフの集団「ひま人くらぶ」による短編映画である。
本作が発表された前年の67年には、同じくCM出身の大林宣彦監督による「いつか見たドラキュラ」が発表されている。

経の吸血シーンは同年公開の「帰って来たドラキュラ」にとてもよく似ており、またそれが意外に良い効果を生んでいるように思う。明らかにハマーホラーの影響を受けていると思われる。ハマーホラーの影響を受けた作品は数多いが、その中でも本作はそこそこのレベルを保っているのではないか?

朽ち果てた羅生門や鎧姿の義経のイメージが、吸血鬼という異文化の化け物に割とよく似合っており、これはこれで違和感が無く楽しむことができた。

45分のカラー・サイレント映画である。