レイ・ブラッドベリの有名小説をヌーベル・ヴァーグ(新たな波)の監督トリュフォーが映画化した。
実に若々しくて、若き製作者の「俺達の主張はこれなのだ。」という熱がある。
活字が禁止されている世界の映画なので、タイトルクレジットもオープニングクレジットも無く、キャストとスタッフが、ナレーションで語られる。これが実に珍妙な印象を受けるのだが、反面、「ここから先は文字が出てこない」という暗示めいたものも感じて、観ているほうはちょっと空恐ろしい。
文字を否定した世界の話だから、全編目に入る光景には文字が無い。番地も、看板も、表札も、普通にあるものがすべて無い。観ている方としては、これが結構苦痛だったりする。普通にある文字が無いというだけで、これだけ違和感を感じるのか。
当然この体制に反発する一派がいる。彼らは消防士(警察)に追われる存在。そして彼らは「本の人々」と呼ばれる観客の救世主だ。彼らは本を丸暗記して、人々に語って伝えるという使命を担っている。一人一人の名前がインディアンネームならぬ「本の題名」だ。実に高潔な人々でユーモアたっぷりな人々。
確かにいい映画ではあるが、個人的には生理的に受け付けない。文字の無い世界、文字がこれほど生活のうえで重要で落ち着くものかと再認識させられた。観てて吐き気がする感は否めない。あくまで個人的なものだが。
ちなみに、華氏451度は「本が自然発火する温度」のことだそうだ。
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