1960⇒1969

2012年12月アーカイブ

帰って来たドラキュラ

ハマーのシリーズ4作目。
監督はテレンス・フィッシャーから、カメラマンのキャリアを持つフレディ・フランシスに交代。


この作品では様々な演出が試みられた。
ロケーションの多用により、地理関係の広大さを明確にし、切り立った山頂に雲つくようにそびえ立つドラキュラ城であるとか、住宅街の屋根の上での追跡劇を加えることで「高さ」を演出。それまでにない舞台空間の広がりを、立体的に見せることに成功している。

ことに、「高さ」が強調されるシーンが多い。これによって「不安定」さが演出され、自然に心理的不安に駆られる。

また、ほのぼのとしたホームパーティのシーンに、狂ったように疾走するドラキュラの馬車のカットを差し込むといった、明暗の強調、これも神経にざらつく演出である。これらと、映画全般のどんよりした色調も手伝って、映画全体が実に陰惨で不安な空気を醸しだしている。

シリーズ中随一、不思議な雰囲気に包まれている作品だ。ジェームス・バーナードの音楽も、お馴染みだったドラキュラ・テーマを一新。宗教曲を取り入れた重い曲調となった。

テレンス・フィッシャーの演出とは違うが、これはこれで面白い。しかし、幾分ベットリし過ぎな感は否めない。

時は1968年。ホラー映画は「ナイト・オブ・ザ・リヴィングデッド」と「ローズマリーの赤ちゃん」の登場により、新たな時代を迎えていた。この時ハマーは頂点に達していた。本作の撮影中に、ハマーはエリザベス女王から、英国に多くの利益をもたらしたことで叙勲される栄誉に授かった。