1930⇒1939

吸血鬼(1932)

"VAMPYR"
フランス/ドイツ / トビス・フィルムクンツ

[Staff]
制作:カール・テホ・ドライヤー、ニコラ・ド・グンツブルグ
監督:カール・テホ・ドライヤー
脚本:クリステン・ユル
原作:シェリダン・レ・ファニュ「吸血鬼カーミラ」
撮影:ルドルフ・マテ
特撮:ヘンリ・アーマンド
音楽:ヴォルフガング・ゼラー
配給:Vereinigte Star-Film GmbH(独)、MK2 Diffusion(仏)、General Foreign Sales Corp.(米)

[Cast]
アラン・グレイ・・・ジュリアン・ウェスト
老紳士・・・モーリス・シュッツ
ジゼル・・・レナ・マンデル
レオーヌ・・・シビレ・シュミッツ
村の医者・・・ヤン・ヒエロニムコ
マルグリット・ショパン・・・アンリエット・ジェラール
老召使・・・アルベルト・ブラ
その妻・・・N・ババニーニ
看護士・・・ジェーン・モラ
片足の男・・・ゲオルゲス・ボイディン

[Story]
 夢想家の若者 アラン・グレイは、行く当てもなく旅を続け、何かに呼ばれるようにクルタンピエールの村に立ち寄った。村の宿屋に滞在したアランは、夜、部屋に入って来た老紳士から、「あの子を死なせないように」と告げられ、1つの小包を受け取った。老紳士は小包に「私の死後に開封するように」と一筆したためた。

 アランは、翌朝、得体のしれない影に導かれ一軒の廃墟にたどり着いた。そこには実体の無い無数の影と、白髪の老婆、髭の男、片足の男がいた。どうやら、白髪の老婆が館の主らしい。

 アランはさらに「影」に導かれ、大きな屋敷にたどり着いた。そこはアランの部屋にやって来た老紳士の屋敷。 老紳士はレオーネとジゼルという二人の娘と、召使たちと共に暮らしていた。レオーネは原因不明の病気に侵され、瀕死の状態。アランが窓から屋敷の中を覗くと、老紳士は何者かに鉄砲で撃たれ、アランが助けに入るも、ついに老紳士はこと切れてしまった。

 アランが老紳士に託された小包を開けると、そこには「吸血鬼の書」があった。そこには吸血鬼の概要と近年起った、吸血鬼による事件の概要が記されてあった。

 そんな時、病床にあったレオーネが外に出て行ってしまう。アランとジゼルが探しに行くと、野原でベンチに横たわるレオーネの首筋に、あの白髪の老婆が顔をうずめていた。レオーネは救出され、医者が呼ばれた。その医者は、アランが奇妙な体験をした館の髭の男だった。

 医者はアランに輸血を求め、アランもそれに応じた。アランは大量の血を抜かれた。

 レオーネの安否を気遣う老召使もまた「吸血鬼の書」を紐解く。老召使はそこに書かれてあった「女吸血鬼マルグリット・ショパンの伝説」を読み、その存在を察知した彼は吸血鬼退治の準備を始める。

 アランは消耗した体力の中、幽体離脱か、あるいは幻覚か夢を見る。マルグリットショパンの館にジゼルが監禁され、ある部屋には1つの棺がある。棺の中にはアラン自身が横たわっていた。蓋が閉められ、カっと見開いたアランの目には、顔を覗き込む女吸血鬼の姿があり、棺が運ばれる外の情景が映った。

 そしてアランは目覚めた。ふと見ると、老召使が墓をあばこうとしている。墓石には「マルグリット・ショパン」の名が彫られている。二人は、吸血鬼の胸に深く、深く、杭を打ちこみ、吸血鬼は止めを刺された。そして呪いは解かれ、レオーネは回復し、監禁されたジゼルも救われた。

 吸血鬼の手下の医師と片足の男は、轟く雷鳴の中、窓に映る「怒りに燃えた大きな顔」を見る。娘たちを狙われ、自らも非業の死を遂げた、あの老紳士の顔であった。おそれおののき逃げまどう二人。片足の男は階段で足を滑らせて落ちて死んだ。医者は製粉工場に逃げ込み、粉溜めの小部屋に閉じ込められてしまった。そこには老召使の姿があった。助けを求める医者をよそに、老召使は機械のスイッチを入れた。医者は激しい命乞いの末、粉に埋もれてしまった。かくして吸血鬼一派は壊滅したのである。

[Text]
 映画愛好家のニコラ・ド・グンツブルグ男爵が出資者となり、自ら「ジュリアン・ウェスト」の名で主演した。

 ほとんどの出演者が素人で、演技の心得のあった者はレオーヌ役のシビレ・シュミッツと、老紳士役のモーリス・シュッツのみであったと言われる。

 吸血鬼の手下の医者の風貌は、後に「ポランスキーの吸血鬼」のアブロンシウス教授に影響を与えたとされる。

 古典映画、特に無声映画にはよくあることだが、編集が異なるバージョンが多々出回っており、いずれも完全なプリントではない。1990年代にリストアされて公開当時のドイツ語版に最も近いとされる、「ボローニャ版」がリリースされた

 公開当時の検閲で、吸血鬼殺害のシーンが「残酷すぎる」ということで、フィルムにして53mほど短縮された。
ボローニャ版はこれらのシーンは無いが、カットされたシーンは現存している。(ボローニャ版DVDに特典映像として収録。)

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