1930⇒1939

黒猫(1934)

"THE BLACK CAT"
アメリカ / ユニバーサル

[Staff]
制作:E・M・アッシャー/カール・レムレ.Jr
監督:エドガー・G・ウルマー
脚本:ピーター・ルーリック
原作:エドガー・アラン・ポー
撮影:ジョン・J・メスカル
音楽:ハインツ・エリック・ロームヘルド
配給:ユニバーサル

[Cast]
ヤルマー・ポールジック・・・ボリス・カーロフ
ヴィートス・ヴェルデガスト・・・ベラ・ルゴシ
ピーター・アリソン・・・デヴィッド・マナーズ
ジョーン・アリソン・・・ジュリー・ビショップ
召使・・・エゴン・ブレッチャー
ターマル・・・ハリー・コーディング
カレン・・・ルシル・ランド
巡査部長・・・ヘンリー・アルメッタ
警部補・・・アルバート・コンティ

[Story]
  ハンガリーを新婚旅行中の三文作家のピーター・アリソンと新妻のジョーンは、列車内で精神学者ヴェルデガストと出会った。奇遇にもヴェルデガストはアリソン夫妻の行き先の近隣で、途中まで旅を共にすることになったが、現地の道程で交通事故を起こし、やむなくヴェルデガストの目的地に逗留することになった。そこは建築家ポールジックの館。ヴェルデガストにとってポールジックは戦時中の上官で、ポールジックの裏切りによりヴェルデガストはロシアでの長期抑留を余儀なくされていた。彼の不在の間、ポールジックはヴェルデガストの妻を娶り、娘のカレンをも手中に収めていたのだ。ヴェルデガストは妻と娘を奪還すべく、ポールジックに挑戦する。しかし、彼の妻はすでにこの世のものではなく、その亡骸ははく製にされて装飾品のごとく飾られていた。さらにポールジックは妻の亡き後にカレンを妻にしていた。また、ポールジックは悪魔崇拝教団の司祭で、新月の晩に儀式を行っていた。そしてその生贄としてジョーンが狙われていたのだった。

[Text]

 本作はボリス・カーロフとベラ・ルゴシとの初の共演映画で、1934年度のユニバーサル映画で最高のヒットを記録した作品。監督のエドガー・G・ウルマーは美術監督の出身で、ドイツ映画『最後の人』の美術監督、『巨人ゴーレム』(1920)、『メトロポリス』(1926)、『M』(1931)等のセットデザインを手がけている。

 音楽はハインツ・エリック・ロームヘルドによる。テーマ曲だけでなく、映画全編に挿入曲が流れる最初期の作品でもある。

 エドガー・アラン・ポーの短編小説『黒猫』が下敷きになっているが、ピーター・ルーリックによる脚本には原作の面影はほとんど残されていない。本編で登場する黒猫は、過剰なまでに黒猫を忌み嫌うワルデガストの前に現れて彼を悩ませるだけの存在であった。しかし、黒猫が悪魔の化身であるという迷信や、死に対する恐怖、特定の女性に対する執着といったポーの作品の重要な要素が散見される。

 ポールジックの人物像はイギリスのオカルティスト(神秘主義者)であるアレイスター・クロウリーがモデルとなっている。また、ポールジックの名は『巨人ゴーレム』(1920)の美術監督を務めたドイツ表現主義を代表する建築家ハンス・ペルツィヒ(同スペルのドイツ語発音)からのイタダキである。ペルツィヒは本作がアメリカでの映画監督デビューとなるウルマーの助言役であった。ウルマーは本作の悪役をポールジックと名付けることにより、その礼に報いたのである。

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