1970⇒1979

デビルズ・ゾーン(1979)

"TOURIST TRAP"
アメリカ / コンパス・インターナショナル・ピクチャーズ/マンソン・インターナショナル・ピクチャーズ/チャールズ・バンド・プロ

[Staff]
制作:チャールズ・バンド
監督:デヴィッド・シュモーラー
脚本:デヴィッド・シュモーラー
撮影:ニコラス・フォン・スターンバーグ
音楽:ピノ・ドナッジオ
配給:コンパス・インターナショナル・ピクチャーズ/マンソン・インターナショナル・ピクチャーズ

[Cast]
スローソン・・・チャック・コナーズ
モーリー・・・ジョセリン・ジョーンズ
ジェリー・・・ジョン・ヴァン・ネス
アイリーン・・・ロビン・シャーウッド
ベッキー・・・タニヤ・ロバーツ
ティナ・・・ダウン・ジェフォリー
ウッディ・・・キース・マクダーモット

[Story]
 車でバカンスを楽しむウッディ、ジェリー、モーリー、アイリーン、ベッキーの若者5人は、山道でタイヤがパンクしたために立ち往生してしまった。ウッディは近くのガソリンスタンドにタイヤを運んだが、そこは無人であった。しかし、ウッディはそこで得体の知れない現象に巻き込まれ、命を落としてしまう。

 帰りの遅いウッディを探しに向かった4人は、途中スローソンという男に出会う。スローソンは路頭に迷う4人を自宅に招いた。その近隣には怪しげな邸がある。それはスローソンが作った「マネキンの館」。4人はその館に興味を持ち、まずアイリーンがその館に侵入した。すると、不気味な仮面を被った怪人が現れ、アイリーンを襲った。次にアイリーンを探しに来たジェリーとベッキーも怪人に捕まってしまった。怪人はジェリーとベッキーの目の前で、寝台に縛られたアイリーンの顔に石膏を塗りたくり、窒息させて殺してしまう。怪人はその石膏で顔型を作り、嬉々としている。

1人残されたモーリーもまた、友人たちを探しに館に向かったが、道の途中で怪人に襲われた。怪人から逃げるモーリーはスローソンに助けられ、「怪人の正体は自分の弟だ」と告げられる。しかし、怪人はスローソンその人だった。彼は怪しげな力を持つ「人形使い」だったのだ。彼の力で動き出したマネキンたちが、若者たちに襲いかかってくる・・・。

[Text]

 若者たちがバカンスの途中で殺人鬼に追われる、というプロットの作品は多々あるが、本作でちょいと趣向が違うのは、その殺人鬼が「本物の魔法使い」であることだ。映画の性質上「超能力者」というのが正しいのだろうが、その力は完全に我々の知る「超能力」を逸脱しており、ほとんど「魔法」である。


 床に転がっている人形の首がゲタゲタ笑いだす、数多のマネキンがガタガタ動き出し、キャーと叫び、その顔はマリオネットのそれかと思えば、人間と寸分違わない姿で人を騙す。それを操る人形使いを「超能力者」と呼ぶにはあまりにも現象が荒唐無稽である。

 スローソンは凡庸な田舎のオヤジの風体だが、その実態は「超能力者」というよりは、悪魔や魔法使いといった「怪物」であった。

 また、スローソンがそうなってしまったのには、「弟と愛妻の不貞を目撃したことから二人を殺し、それでも妻に未練があったので妻のマネキンを作った」という、「黒猫(1935)」などの古典怪奇映画に時々見られる古風な理由があった。

 物語の下敷きは「悪魔のいけにえ」そのもので、スローソン自身も不気味な仮面を被って暗躍するところなどはレザー・フェイスのパクリであるが、やはりこう、マネキン軍団のインパクトが逸脱しており、(少なくとも筆者には)そんなパクリなどどうでもよくなってくるのだ。 

特撮はおそらく製作当時の目で見ても単純なものだったのだろうが、その稚拙さを逆手に取り、様々な工夫も功を奏して、不気味さを醸しだしている。閉店後の深夜のデパートでマネキンが動き出す、などという都市伝説的なシチュエーションを頭に思い浮かべたことのある人も多いと思うが、それを具現化してしまったのが本作である。

 監督によると、殺人鬼役のチャック・コナーズはそれまで定着していた「正義の味方のイメージ」からの脱却を図っていて、本作のような作品への出演を望んており、ホラー映画のスターになりたがっていた、という。
 仮面を被った怪人があの独特の大きなアゴで丸わかりなのはご愛敬。

 若者の1人を演じているのが、TVシリーズ「チャーリーズ・エンジェル」で人気を博した、売れる前のタニヤ・ロバーツである。

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