1960⇒1969

血とバラ(1960)

"Et mourir de plaisir (BLOOD AND ROSES)"
フランス=イタリア / Documento Film/Films EGE

[Staff]
制作:レイモンド・イーガー
監督:ロジェ・ヴァディム
脚本:ロジェ・ヴァディム、ロジェ・ヴァリアント
原作:シェリダン・レ・ファニュ「吸血鬼カーミラ」
撮影:クロード・ルノアール
メイク:アマト・ガルビニ
音楽:ジャン・プロドロミデ
配給:パラマウント

[Cast]
レオポルド・カーンシュタイン伯爵・・・メル・フェラー
ジョルジア・モンテベルディ・・・エルザ・マルティネリ
カルミラ・・・アネット・ヴァディム
カルロ・ルジエリ・・・アルベルト・ボヌッキ
ヴァレリ医師・・・ルネ・ジャン・ショーファール
リサ・・・ガブリエラ・ファリノン
ジョゼッペ・・・セルゲ・マーカンド

[Story]
 ローマ近郊、カーンシュタイン家の古城。
 主人の伯爵・レオポルドと、モンテベルディ判事の令嬢・ジョルジアとの華やかな結婚式が開かれる中、花火の引火で戦時中の不発弾が突如爆発、カーンシュタイン家の霊廟が破壊され、家に伝わる吸血鬼・ミラルカが復活した。
 ミラルカは自分と瓜二つの子孫で、レオポルドに好意を持つ彼の従妹・カーミラを霊廟までおびき寄せ、その身体を借りて、ついに外に放たれる。

 ミラルカはかつて、カーンシュタイン家の当主ルドヴィクに心を寄せていた。ミラルカはレオポルドにルドヴィクの面影を見、果たせなかった恋を成就させるため、レオポルドを我がものにしようとする。それにはジョルジアが邪魔である。
 ミラルカはジョルジアを狙うが上手くいかず、空腹を満たすために伯爵家の女中・サラを襲う。その翌日、森の中でサラの死体が発見され、また、霊廟に戻る姿を下男のジョゼッペに目撃された事もあって、それまで風化していた「吸血鬼伝説」が持ち上がった。
 そしてミラルカは、寝床に着いたジョルジアの襲う。しかし、悪夢を見たジョルジアが悲鳴をあげたことで、またも目的を果たす事は出来なかった。

 翌日、ヴァレリ医師の手当てによりジョルジアは快方に向かうが、同時にミラルカが行方不明となる。そしてジョルジアを殺そうとした犯人が、カーミラ(=ミラルカ)であることが露見した。医師は「カーミラがレオポルドの結婚により傷つき、現実逃避をするためにミラルカとなり、ジョルジアを殺すことで、レオポルドの愛する人になり変わろうとした」と分析する。
 ミラルカは、森へと逃げるが、軍の処理する大戦の不発弾が爆発し、その爆風で崖から落ち、鉄条網の支柱に胸を貫かれて絶命した。しかし、その霊魂は瞬時にジョルジアに憑依し、ついにミラルカはレオポルドを我がものにしたのである。

[Text]

 ここでの「吸血鬼」は、カメラ視点に、世を俯瞰するようなナレーションが入るという一人称で描かれている。

 本編を素直に受け入れるならば、復活したのは「吸血鬼本体」ではなく「霊魂」ということになる。 しかし、カーミラが霊廟を訪れるシーンでは、実際に吸血鬼がよみがえったような描写があったりするので、どうも存在に一貫性が感じられない。そのためか吸血鬼の存在が極めてボンヤリしており、この作品は「ホラー映画」としては非常に退屈なものとなっている。
欧米での評価は芳しくなかったが、日本では何故か評価が高い。
本編を素直に観ていけば、失恋に嘆くカーミラが吸血鬼ミラルカに見いられ、霊廟で獲り殺されており、その後はずっと吸血鬼ミラルカの暗躍である。このあたりしっかり描かれていれば、多少くっきりとしたホラー映画になったと思うが、ここがグチャグチャなので、ここから先の吸血鬼がカーミラなのかミラルカなのかがはっきりしない印象になり、加えてストーリーがこねくり回されすぎ、さらに加えて編集がまずく、下手するとつじつまが合っていないところがあることや、無理矢理話を終わらせる展開なども相まって、映画全体がよくわからないことになっている。
本作は、温室でのミラルカとジョルジアのキスシーンや、ミラルカがジョルジアの首を狙うシーンばかりが引き合いに出され、必ずといって良いほど「レズビアニズム」が取り沙汰されるが、どこがレズビアンなものか。この吸血鬼は昔好きだった男と添い遂げられず、現代でそれに似た男を狙って、許嫁を殺そうとしているのだ。こんな男好きな女吸血鬼はあまり見ない。しかもツンデレである。
実際のところ、ミラルカのジョルジアに対する感情は、「憎悪」だったのだと思う。

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